自動車のエンジン部品やアルミホイール、飲料缶などのアルミ製品の多くは、新品の地金(一次地金)ではなく「アルミニウム二次合金」からつくられています。
二次合金は、使用済みのアルミスクラップを溶かして、成分を調整してつくられるリサイクル素材でありながら、新地金に匹敵する、あるいはそれ以上の性能を持つ製品もあります。
さらに製造時のエネルギー消費を新地金製造の一部程度に抑えられるため、省資源・省エネルギーの観点からも重要な役割を担っています。
アルミニウム二次合金の定義から一次合金との違い、製造工程、そして国内の主要メーカーとその特徴まで詳しく解説します。
アルミニウム二次合金とは
アルミニウムの製錬・精製業は、ボーキサイトからアルミナを抽出し電解工程を経て新地金を作る「第一次製錬・精製業」と、工場で発生した加工くずや使用済み製品由来のアルミスクラップを主原料として、用途別に成分を管理しながら溶解・鋳塊する「第二次製錬・精製業」に大きく分けられます。
業界では後者を「第二次製錬・精製業」と呼ぶことはほとんどなく、一般に「アルミニウム合金業」と呼ばれています。この工程で作られる地金が、いわゆる「アルミニウム二次合金(合金地金)」です。
国内のアルミニウム二次地金・合金地金の需要量はおよそ150万トンになっており、国内アルミニウム総需要量(約400万トン)の4割弱を二次合金がまかなっているとされています。
一次合金(新地金)との違い
一次合金(新塊合金)は、ボーキサイトから抽出した不純物の少ない純アルミニウムをベースに合金化したもので、成分が安定している高品質な素材です。二次合金は、さまざまな合金製品由来のスクラップを原料とするため鉄などの不純物が混入しやすい特性がありますが、メーカー各社は新塊合金と同水準の品質管理体制のもとで製造を行っており、国内で流通するアルミニウムの大部分がこの二次合金によって支えられています。
化学成分はJIS規格に基づいて管理され、原料であるアルミ地金・アルミスクラップに必要な金属元素を規格の範囲内で配合・添加し、鋳造して鋳塊に仕上げます。珪素(Si)、銅(Cu)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)などの元素を添加することで、鋳造性・耐食性・強度といった性能を高めることができる一方で、規格の範囲を超えて添加すると性能が低下してしまうために、成分管理の精度が品質を左右する重要な工程になります。
アルミニウム二次合金の製造工程
日本アルミニウム合金協会(JARA)が公開している生産工程モデルをもとに、二次合金地金が作られるまでの流れを整理すると、おおむね次のステップですすみます。
スクラップの収集・選別
飲料缶やエンジン解体物、工場から出る加工くず(新断屑)など、種類も化学成分もさまざまなアルミスクラップを回収し、用途に応じて選別します。
溶解
選別したスクラップおよびアルミ新塊を溶解炉で溶かします。原料の状態によって溶解の難易度や歩留まりが変わるため、炉の管理や作業手順が品質に直結します。
成分調整(合金化)
溶湯に必要な金属元素を規格の範囲内で配合・添加し、目的とする合金グレード(ダイカスト用、鋳物用、脱酸用、展伸用など)に応じた成分に整えます。不要な不純物やガス含有量、非鉄金属の介在物の管理もこの段階で行われます。
鋳造(鋳塊化・溶湯供給)
成分調整を終えた溶湯を鋳込み、インゴット(鋳塊)に成形します。近年は環境負荷の低減や生産効率向上の観点から、鋳塊にせずそのまま溶湯の状態でユーザー企業に供給する「溶湯供給」も増加傾向にあります。
検査・品質管理
常用の分析管理元素はもちろん、管理対象外の不純物やガス含有量なども厳格にチェックします。製造作業標準や検査基準、溶解作業記録、ロットごとの試料保管などの体制を整えることで、万一のクレーム発生時にも原因究明を迅速に行える仕組みが構築されています。
二次合金が支持される理由(省エネルギー・環境貢献)
二次合金地金の製造は、新地金を一から製造する場合と比べてわずか3%程度のエネルギーで済むとされており、省エネルギー面で大きなメリットがあります。
また、ビールやジュースの空き缶をはじめとする使用済みアルミ製品や、自動車エンジンの解体物といったスクラップ類を原料として再利用することで、資源保全・環境保全の面でも重要な役割を果たしています。
近年ではリサイクル由来でありながら高強度・高熱伝導といった特性を持つ開発合金も登場しており、EV・HV向け部材など先端分野での採用も進んでいます。
アルミ二次合金の主な用途
アルミニウム合金地金の約8割は鋳物・ダイカスト用として使用されており、これらの製品の9割以上が自動車・二輪車向けです。とくにピストンやシリンダーヘッド、インテークマニホールドといったエンジン関連部品、トランスミッションなどのドライブトレイン関連部品、コンデンサーやラジエーターといった熱交換器関連部品では、その多くが鋳物・ダイカスト製法によって製造されています。
自動車のボディーやホイールの軽量化にもアルミニウムが活用されており、燃費向上や排出ガス抑制にもつながっています。このほか、飲料缶用の板材や住宅用サッシなど、身近な製品にも二次合金は幅広く利用されています。
アルミ二次合金メーカーの特徴
国内には、独自の開発合金や品質管理体制を強みとするアルミ二次合金メーカーが複数存在します。代表的な企業の特徴を紹介します。
日軽エムシーアルミ株式会社
日本軽金属グループの一員で、旧エムシーアルミが日本軽金属のアルミニウム合金事業を承継して発足しました。
国内外合わせて大規模な生産能力を持ち、主にスクラップをリサイクルした二次合金を製造している。ADC12を上回る強度や熱伝導性を持つ開発合金(DXシリーズ)を展開し、EV・HV部材向けにも採用がすすんでいます。
大紀アルミニウム工業所
大阪に本社を置く、大正期創業の老舗アルミ合金地金メーカーです。ダイカスト用・鋳物用・圧延用の各種アルミニウム合金を製造しており、環境配慮型の高強度合金など独自の開発合金も手がけています。
新関西金属株式会社
関西軽金属とスミアル合金の合併、その後の昭和軽金属との統合によって誕生した企業で、新塊ベースの一次合金とスクラップベースの二次合金の両方に対応している点が特徴。アルミニウム地金や母合金、鋳物・ダイカスト用合金地金など幅広い品目を扱います。
戸松冶金株式会社
主に砂型鋳造用のアルミニウム合金を製造。JIS規格の範囲内で化学成分を微調整し、顧客の求める特性に合わせた二次合金地金を提供しています。
アサヒセイレン株式会社
ダイカスト用・鋳物用・脱酸用・展伸用のアルミニウム合金地金を製造。環境配慮と生産性向上を両立させた合金小型塊などを展開し、業界の省資源ニーズに対応しています。
なお、これらの二次合金メーカーが加盟する業界団体として「一般社団法人日本アルミニウム合金協会(JARA)」があり、業界全体の統計資料や生産実績、規格に関する情報を公開しています。
参照・引用先
一般社団法人 日本アルミニウム協会「アルミの基礎知識」
一般社団法人 日本アルミニウム協会「アルミニウム材料の諸特性データベース 1. 合金の種類と調質」
一般社団法人 日本アルミニウム協会「アルミニウムとは」(PDF)
一般社団法人 日本アルミニウム合金協会(JARA)「アルミニウム二次製錬・精製業の概要」



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