電子機器でよく使われている「電解コンデンサ」ですが「電解液を使ったコンデンサ」ということは分かっても、なぜアルミニウムが使われているのか、アルミはコンデンサのどの部分に使われているのかまでは、あまり知られていません。
一般的なアルミ電解コンデンサでは、内部にアルミニウム製の陽極箔と陰極箔が使われています。さらに、外側のケースにもアルミニウムが使われる構造が一般的です。
電子回路の電源ラインには必ずと言っていいほど「電解コンデンサ」が使われています。その多くが「アルミ電解コンデンサ」で、部品の中身のほとんどがアルミニウムでできています。なぜコンデンサの電極材にアルミニウムが使われているのか、どの部分にどんな純度の合金のアルミが使われているのか、そしてどのようにコンデンサへと組み立てられていくのかを解説します。
アルミ電解コンデンサとは何か
コンデンサは、電気を蓄えたり放出したりする電子部品です。電源回路の電圧を安定させる「平滑」や、ノイズを取り除く「デカップリング」などの役割を担います。
アルミ電解コンデンサは、コンデンサの中でも比較的大きな静電容量を得やすく、電源回路の平滑化など、さまざまな電子機器で利用されています。
アルミ電解コンデンサは小型でありながら大きな静電容量を得られることが最大の特長で、電源回路の定番部品として広く使われています。
電解液を用いる湿式タイプが主流ですが、導電性高分子などの固体電解質を使うタイプもあります。
コンデンサのどの部分にアルミが使われているのか
- アルミ電解コンデンサは、大きく分けて次の3つの部材で構成されています。
- 陽極アルミ箔:表面に酸化皮膜を形成し、これが実際の誘電体(絶縁層)として働く中心部材
- 陰極アルミ箔:電解液と外部端子をつなぐ集電体としての役割を果たす部材
- アルミケース:素子全体を包み、封止する外装部材
陽極箔・電解紙(セパレータ)・陰極箔を重ねて巻き込んだものを電解液に浸し、アルミ製のケースに封入する構造で、アルミが陽極として電解液中で電気をかけられると表面に酸化皮膜が生成され、この酸化皮膜が誘電体として機能する仕組みになっています。
アルミは「電極」であると同時に、その表面にできる酸化膜が「絶縁体」を兼ねているということで効率のよい構造を実現しています。
電極材にアルミニウムが選ばれている理由
酸化皮膜が誘電体として優秀
コンデンサの静電容量は電極面積と誘電体の比誘電率に比例し、誘電体の厚さに反比例するため、耐圧が高く極めて薄い膜にできる酸化アルミニウムは誘電体として理にかなった材料です。さらに箔表面をエッチングして実効面積を見かけ上の数十~数百倍に拡大できるため、大きな静電容量を得やすいという利点もあります。
電気伝導性と軽さのバランスが良い
アルミニウムは電気伝導率だけを銅と比較すると銅を100とした場合で約60程度ですが、比重が銅の3分の1しかないため、同じ重さで比較すると銅の2倍の電流を流せることになります。軽くてよく電気を通すという性質が、電子部品の材料として強みになっています。
加工性・量産性に優れる
アルミは箔状に薄く延ばす圧延加工がしやすく、大量で均質に生産できるため、コンデンサ用の巻回素子として量産するのに向いています。
コストと資源量のバランス
地表に豊富に存在し、リサイクルも進んでいる素材であることから、他の金属材料に比べてコストを低いことも選定理由のひとつです。
コンデンサ用アルミ箔の材質
電解コンデンサ用のアルミ箔は、家庭用アルミホイルとは違って、非常に高い純度となっています。
陽極となるアルミ箔には純度4N(99.99%)程度の高純度アルミニウムが使われ、含まれるケイ素・鉄・銅・マグネシウム・亜鉛などの微量不純物の種類と量が、エッチング加工でできる凹凸の形状や、酸化皮膜の漏れ電流、製品寿命にまで影響します。
用途によって微量元素の配合を変えた合金設計がされていることもありますが、高純度アルミ地金に微量の化学成分を調整して作られた専用のスラブから、表面積を大きく確保しながら折り曲げ強度も両立できるよう管理されたコンデンサ用アルミ箔が製造されています。
アルミ箔の製造方法??鋳造・圧延からエッチング・化成処理まで
- コンデンサ用アルミ箔ができるまでの工程は次の流れとなっています。
- 鋳造:高純度アルミ地金に微量成分を調整してスラブ(鋳塊)を作る
- 熱間圧延・冷間圧延:スラブを繰り返し圧延して薄い箔まで延ばしていく。中間で焼鈍(熱処理)を挟み、加工による硬化を調整しながら箔厚を数十μmまで薄くする
- エッチング処理:電極面積を拡大するため、陽極用・陰極用それぞれ専用の条件で箔表面を電気化学的に粗面化し、見かけの面積を大きく広げる処理
- 化成処理(陽極箔のみ):エッチング後の陽極箔表面に、電圧をかけて酸化アルミニウムの被膜をあらためて形成する処理。
陰極箔は基本的にエッチングのみで、化成処理は行わず自然酸化皮膜のままとして使われます。
電解コンデンサの組み立て方法
箔が完成したあとの組み立て工程は、おおむね次のような流れです。
- 箔への端子取り付け
陽極箔・陰極箔それぞれに、外部と接続するためのリード線や端子を取り付ける
- 巻回(コイル状に巻く)
陽極アルミ箔・電解紙・陰極アルミ箔・電極端子を一体に巻き込んで素子を作る。電解紙は陽極箔と陰極箔が直接触れないよう間隔を保つ役割も担う
- 電解液の含浸
イオン伝導性を持つ電解液を素子に浸透させる。電解液は誘電体形成された箔表面に浸み込み、実質的な陰極として働くと同時に、温度特性や周波数特性、寿命などコンデンサの性能を左右する重要な材料になる
- ケースへの封入・封口
電解液を含浸させた素子をアルミケースに入れ、封口材で密封する
- エージング(電圧印加処理)
組み立て後に定格に近い電圧を加え、加工でできたキズなどを再化成によって修復し、特性を安定させる
なお、充放電を繰り返すと陰極箔表面でアルミと電解液による化学反応が進行し、陰極容量やコンデンサ全体の容量が徐々に低下していくため、アルミ電解コンデンサには他の電子部品と異なり明確な「寿命」がある点も、構造上の特徴となっています。
参照・引用先
一般社団法人 日本アルミニウム協会「アルミのヒミツを数字でみると?
日本ケミコン株式会社「アルミ電解コンデンサの構造」
日本ケミコン株式会社「アルミ電解コンデンサにおけるアルミニウム電極箔の表面処理技術」
日本ケミコン株式会社「アルミニウム電解コンデンサ テクニカルノート」
ニチコン株式会社「アルミニウム電解コンデンサの概要」
株式会社UACJ製箔「コンデンサ箔」
堺アルミ株式会社「アルミニウム電解コンデンサ用箔」
TDK株式会社「電解コンデンサの種類」


コメント