アルミのヤング率について鉄との比較、温度との関係など解説

アルミ板 解説

アルミニウムのヤング率について鉄との比較してみます。また温度との関係などを解説します。

ヤング率とは

ヤング率、縦弾性係数(Young’s modulus)とは、材料の弾性変形に対する抵抗力を示す指標のことです。

材料に引張応力、引っ張る力を加えた場合、どれくらい伸びにくいかを表しています。ヤング率が高いほど、変形しにくい、つまり剛性の高い材料ということになります。

数式は次のとおりです。

ヤング率(E) = 応力(σ) / ひずみ(ε)

応力(σ)とは材料にかかる単位面積あたりの力
ひずみ(ε)とは元の長さに対する伸びの変化量

単位はパスカル(Pa)またはギガパスカル(GPa)が使われています。

ヤング率は、物質の弾性特性を表す物理量であり、応力(力の強さ)とひずみ(変形の度合い)の関係を数値化したものです。

材料がどの程度の剛性を持っているかを評価できます。ヤング率が高い材料ほど、変形しにくい性質を持っています。

アルミ押し出し

アルミのヤング率

純アルミニウムのヤング率は約70GPa(ギガパスカル)です。これは、鉄(約200GPa)と比較して約1/3程度の値です。つまり、同じ力を加えた場合、アルミニウムは鉄よりも約3倍伸びやすいということになります。

この約70GPaは鉄や鋼に比べて低いため、アルミは、より変形しやすい特性を持っていますが、その軽量性と組み合わせることで、航空宇宙、自動車、建築分野などで広く活用されています。

アルミのヤング率は、純アルミと合金アルミで多少異なります。これは、合金元素や製造プロセスが弾性特性に影響を与えるためです。

アルミの材質別のヤング率

アルミニウムは様々な元素との合金として使用され、その組成によってヤング率も若干変化します。代表的なアルミニウム合金のヤング率を示します。

純アルミニウム(1xxx系、A1050など):約70GPa

ジュラルミン(2xxx系、A2017、A2024):約72~73GPa

アルミニウム合金5000系(5xxx系、A5052など):約70GPa

アルミニウム合金6000系(6xxx系、A6061など):約70GPa

超々ジュラルミン(7xxx系、A7075):約71GPa

このように、アルミニウム合金の種類によってヤング率に大きな差はありません。一般的に70GPa前後となります。

特に、航空機に使用される7xxx系合金は、高強度でありながら比較的軽量となっています。

鉄とアルミのヤング率

鉄のヤング率は約200GPa、アルミニウムは約70GPaです。この違いは、材料の原子結合の強さが原因となっています。

鉄は金属結合が強く、原子同士が強固に結びついているので、変形しにくくなっていますが、アルミニウムは鉄に比べて金属結合が弱いために変形しやすくなります。

軽量化が必要な航空機や自動車の部品では、比強度(強度/密度)の高いアルミニウム合金が適していますが、高剛性が必要な構造物には鉄が適しています。

鉄は高剛性を求める建築や重機に適していて、アルミは軽量化を優先する用途に適しています。

鉄の特性

ヤング率が高いため、高い剛性が必要な構造物に適しています

重量があるので軽量化が課題になることがあります。

アルミの特性

ヤング率が低いが、軽量でありながら剛性を保つ設計も可能です。

航空機や自動車など、軽さが要求される場合に優れた性能を発揮します。

これにより、鉄は高剛性を求める建築や重機に適し、アルミは軽量化を優先する用途に適していると言えます。

アルミのヤング率と温度の関係

アルミニウムのヤング率は温度によって変化します。

温度が上昇するとヤング率は低下します。温度上昇によって原子の熱運動が活発になり、原子間の結合が弱まるためです。

変化量は、合金の種類や温度範囲によって異なりますが、室温から高温になるにつれて数%程度低下する傾向にあります。

高温環境で使用されるアルミニウム部品の設計においては、この温度によるヤング率の変化を考慮する必要があります。

アルミのヤング率と温度の関係の一般的な傾向は次のとおりです。

常温(20℃):約69 GPa

100℃:約64 GPa

200℃:約59 GPa

高温環境ではアルミの剛性が低下するために設計時には温度条件を考慮する必要があります。高温下での使用が想定される部品では、合金選定や冷却対策が重要です。

アルミのヤング率とポアソン比

ポアソン比とは、材料に一方向の力を加えた場合に、その方向に垂直な方向のひずみの比率を示す値です。

アルミのポアソン比は約0.33です。アルミを引っ張ると、引っ張る方向には伸びますが、垂直方向には縮むことになります。

ヤング率とポアソン比は、材料の弾性特性を表す重要なパラメータであり、材料力学の計算などで使われています。

まとめ

アルミのヤング率は、鉄と比較して低くなりますが、軽量性や耐食性などの特性と組み合わせた用途で利用されています。

温度やポアソン比といった他の特性とも関連して、設計するにはこれらを総合的に考慮する必要があります。

適切な材料選定と条件設定により、アルミの性能を最大限に引き出すことができます。

なお、これらの数値は一般的な数字であり、実際の製品では製造方法や熱処理などによって異なる場合があります。

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