ホームセンターなどで1本から売られている小口、小ロットのアルミパイプについて、詳しく解説します。
アルミニウムの材質と調質について
アルミニウムは、軽量で耐食性に優れており、金属の中でも加工がしやすい金属ですが、純アルミニウムは強度が低いというデメリットがあります。
一般的にアルミ素材は、強度を上げるために、ほかの金属元素、たとえばマグネシウム、ケイ素、マンガンなどを添加して強度を高めて使用するのが一般的です。
アルミニウムの材質を分類する際には、主に以下のような合金系統に分けられます。
代表的なアルミニウム合金の種類
・1000系(純アルミニウム系)
純度が高く、耐食性、溶接性に優れていまが、強度は低く構造材には使われません。アルミホイルなどに使われます。
・2000系(Al-Cu系)
アルミニウムに銅を添加した合金です。高い強度を持ちますが、耐食性はやや劣ってしまいます。航空機などに使われています。
・3000系(Al-Mn系)
マンガンを添加した合金で、強度と耐食性のバランスがよくなっています。
・5000系(Al-Mg系)
マグネシウムを添加した合金で、溶接性、耐食性に優れています。船の材料など海洋用途などに使用されています。
・6000系(Al-Mg-Si系)
マグネシウムとケイ素を添加した合金で、強度、耐食性、加工性のバランスがよくなっています。建築材料などに広く使用されます。アルミパイプなど、アルミの押出材、ダイスを使って製作するアルミ形材などによく使われています。
・7000系(Al-Zn-Mg系)
亜鉛とマグネシウムを添加した合金で、強度がかなり高くなっています。アルミニウム圧延材の中で最も強度のある材質です。

調質とは
調質はアルミニウムを加工後に熱処理や冷却、引き伸ばしなどの処理を加えて、特性を向上させる工程のことです。調質は「T6」「H32」などの記号で表され、これが材質の性能を大きく左右します。
調質とは、アルミニウム合金の機械的性質を向上させるための熱処理や加工処理のことです。代表的な調質記号と内容は次のとおりです。
F:製造のままの状態
O:焼なまし(軟らかくする処理)
H:ひずみ硬化(冷間加工による硬化)
T:熱処理による硬化
金属の焼なまし(焼鈍)とは、金属に熱を加えて長時間冷却する熱処理で、金属の結晶組織を均一化して柔らかさを引き出す方法です。
金属のひずみ硬化とは、金属に圧延や鍛造などの冷間加工を加えて塑性変形させることで、金属が硬くなり脆くなる現象です。加工硬化とも呼ばれます。
例えば、アルミの押し出し材で代表的なA6063-T5という表記の場合ですが、A6063合金をT5処理(溶体化処理後、人工時効硬化)したことを意味しており、一定の強度があることを保証しています。

市販のアルミパイプの材質や調質について
ホームセンターなどで市販されている小口・少量のアルミパイプは、ほとんどの場合、A6063合金が使われています。
A6063は、押し出し性に優れており、複雑な形状のパイプを製造しやすいこと、また、強度、耐食性、加工性のバランスがよいことが理由で使われています。
この系統は耐久性や加工性のバランスが良くて、DIYや小規模な建築用途に適しています。
調質は、T5またはT6が多いです。T5は比較的安価で、一般的な用途に適しています。T6はT5よりも強度が高く、より高い強度が必要な場合に使用されます。
T5またはT6のものが一般的で、これによって十分な強度を保ちながらも加工がしやすい特性が得られます。
例えば、T6はアルミ材を溶体化処理してから人工時効硬化させた状態を指しており、高い剛性と強度を持つことが特徴になっています。
- アルミパイプ形状には次のような種類があります:
- 丸パイプ(外径・肉厚のサイズが多様)
- 角パイプ(強度が必要なフレームに最適)
- 異形パイプ(特殊な用途向け)
市販のアルミパイプには、アルマイト処理(表面に酸化皮膜を生成する処理)が施されているものもあります。アルマイト処理によって、耐食性、耐摩耗性が向上し、美しい外観が得られます。
アルマイト処理とは
アルマイト処理は、アルミの表面に人工的に酸化皮膜を形成する表面処理のことです。アルミニウムは空気に触れると自然に酸化皮膜を形成しますが、アルマイト処理では電解処理によって厚く丈夫な酸化皮膜をつくります。
酸化皮膜は化学的に安定してますので他の化学物質と反応しにくい性質があります。アルミは柔らかい金属ですが、酸化アルミニウムは硬いので表面硬さがあがります。酸化アルミニウムの膜は電気を通しません。酸化皮膜の微細孔に染料を吸着させてさまざまな色合いに着色することができますので、アルマイト処理では、カラーアルマイトと硬質アルマイトなどがあります。
硬質アルマイトは、自動車や航空機などの工業分野で、硬度や摩耗性だけでなく潤滑性が求められる分野で幅広く使われます。
アルミパイプを扱っているホームセンターについて
アルミパイプを扱っている代表的なホームセンターと、一般的な値段の相場を示します。ただし、在庫状況や価格は店舗によって違うので実際に店舗で確認してください。
モノタロウ
オンライン通販が中心で、豊富な種類のアルミパイプを取り扱っています。価格帯は幅広く、少量から購入可能です。
楽天市場
多くのショップが出店しています。豊富な種類のアルミパイプを見つけることができます。
価格競争が激しいため、掘り出し物が見つかることがあります。
ハンズネットストア
東急ハンズのオンラインストアで、DIY用途に特化したアルミパイプを取り扱っています。
アルミパイプの値段の相場について
アルミパイプの値段は、材質、サイズ(外径、肉厚、長さ)、調質、表面処理などによってさまざまです。
一般的に、外径が大きくて肉厚が厚いほど、T6調質やアルマイト処理が施されているほど、価格が高くなります。
例えば、外径10mm、肉厚1mmのA6063-T5のアルミパイプの場合、1mあたり数百円程度で購入できることができます。
・カインズ (CAINZ)
価格例:丸パイプ(外径10mm、長さ1m)で約500円~800円。オンラインショップでも購入可能。
・コメリ (Komeri)
価格例:角パイプ(20×20mm、長さ1m)で約1,000円前後。
・DCM
価格例:軽量なアルミ丸パイプ(直径15mm、長さ2m)で約1,200円。
・ビバホーム (Viva Home)
価格例:DIY用アルミパイプ(調質T6、長さ1m)で約600円~900円。
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