アルミの熱処理での性質や性能の変化について費用などコストも解説

アルミ板 解説

アルミニウムなどの金属は、熱処理をすることで、硬さ、強度、延性などの性質や性能を変えることができます

金属の熱処理は、加熱と冷却によって(その組み合わせによって)金属の性質や性能を変化させることができます。特にアルミは、熱処理によって強度や加工性などが変化します。

熱処理プロセスと目的

熱処理による性質や性能の変化

金属を熱処理することで、次のような性質や性能が変化します。

硬度:金属の硬さは、表面の耐摩耗性やへこみにくさを示します。熱処理、特に焼き入れと呼ばれる急冷処理によって硬度を大幅に向上させることができます。

強度:金属の強度は、外力に対する抵抗力です。熱処理によって引張強度(引っ張る力に対する強さ)や降伏強度(変形し始める力)を高めることができます。

延性・展性:延性は金属が伸びる性質、展性は金属が広がる性質です。熱処理、焼きなましの徐冷処理によって、これらの性質を高めて金属を加工しやすくすることができます。

靭性:靭性は金属の粘り強さで、衝撃に対する抵抗力です。熱処理によって靭性を向上させることで、金属が割れにくくなります。

残留応力:加工や溶接などによって金属内部に発生する応力です。熱処理によってこの残留応力を除去して金属の変形や割れを防ぐことができます。

焼きなまし (Annealing)

目的:金属を柔らかくして加工しやすくする。

方法:金属を高温(通常300~500℃程度)で加熱してから、ゆっくり冷却する。

効果:内部の歪みが解消され、延性(伸びやすさ)が向上します。加工中に生じる脆さを改善します。電気伝導性が向上することもある。

例:アルミ板をプレス加工する前に、焼きなましを行うことで割れを防ぎます。

焼き入れ (Quenching)と焼き戻し (Tempering)

目的:焼き入れで金属を硬くして焼き戻しで靭性(壊れにくさ)を調整する。

方法:焼き入れ:金属を高温に加熱した後、水や油、空気で急速冷却する。

焼き戻し:焼き入れ後に再び加熱し、必要な温度で一定時間保持して冷却する。

効果:焼き入れによる硬化。焼き戻しで内部の応力を緩和し、靭性を確保します。

例:アルミ合金の航空機部品に用いられる。

析出硬化 (Aging or Precipitation Hardening)

目的:特定の合金では内部に微小な粒子(析出物)を作り、強度を向上させる。

方法:金属を適切な温度(150~200℃程度)で一定時間保持し、冷却する。

効果:析出物が金属内部の欠陥や動きを抑えることで、硬度や耐久性を向上。

例:航空機のフレームや自動車の高強度部品。

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アルミニウムの具体例

アルミの熱処理

アルミは、熱処理によって、大きく性質が変化する金属です。熱処理の種類と効果は次下のとおりです。

溶体化処理(Solution Treatment):アルミ合金を高温に加熱して、その後急冷することで、合金元素を固溶させます。これにより、硬度や強度が向上します。

溶体化処理とは、金属材料を高温で溶かして結晶の再配列や改質を行う熱処理法です。金属合金の製造や、異方性金属材料の改質、材料の相分離や析出物の形成を促進する目的で使用されます。

析出硬化処理(Precipitation Hardening):溶体化処理後によって中程度の温度で保持することで、合金元素が微細な析出物を生成します。これによって、さらに硬度と強度が向上します。この処理は時効硬化とも呼ばれます。

析出硬化処理とは、金属の表面を硬化させる熱処理の一種で、時効硬化処理とも呼ばれます。

焼きなまし(Annealing):アルミを加熱後、徐冷することで、内部応力を除去し、延性や展性を向上させます。加工後のひずみを除去する目的で行われます。

熱処理の種類

焼きなましとは、金属を一定の温度まで加熱してゆっくりと冷却する熱処理で、金属の加工性や靭性を向上させる効果があります。

金属の種類や目的によっていろいろな熱処理方法があります。代表的なものは次のとおりです。

焼入れ(Quenching):高温に加熱後、水や油などで急冷し、硬度を高める処理。

焼戻し(Tempering):焼入れ後の金属を再加熱し、硬度を若干下げる代わりに靭性を向上させる処理。

焼なまし(Annealing):加熱後、徐冷し、内部応力の除去や延性・展性の向上を図る処理。

焼ならし(Normalizing): 加熱後、空気中で冷却し、組織の均一化や残留応力の除去を行う処理。

焼きなましアルミニウム

特徴: 柔らかく加工が容易。

用途: 飲料缶や薄い板材。

焼き入れと焼き戻しを施したアルミニウム

特徴: 航空機や自動車向けの強度が高い部材。

合金例: 7075アルミニウム(航空機部品に使われる高強度合金)。

析出硬化処理を行ったアルミニウム

特徴:軽量かつ高い強度。

用途:ゴルフクラブ、釣り竿、高性能スポーツ用品。

コスト・費用について

熱処理のコストは、次の要因によって変動します。

金属の種類: 熱処理の温度や時間などが金属によって異なるため、コストが変わる

処理方法: 焼入れ、焼戻し、焼なましなど、処理方法によって工程や設備が異なるため、コストが変わる

処理量: 処理する量が多いほど、単位あたりのコストは安くなる傾向があります。

設備:熱処理を行うための炉や冷却装置などの設備費用や維持費用がコストに影響します。

エネルギーコスト:熱処理は高温に金属を加熱するため、多くのエネルギーを消費します。工場の効率や規模に応じて変動。加熱に必要なエネルギーコストも考慮する必要があります。

一般的に、複雑な熱処理ほどコストが高くなります。析出硬化処理は溶体化処理に加えて保持工程が必要となるため、コストが高くなります。

焼きなまし:比較的低コスト、ゆっくり冷却するため特別な設備は不要です。
焼き入れや焼き戻し:急速冷却のため、専用設備(水槽や冷却油)が必要になる。設備投資がかかる

まとめ

熱処理のコストは、金属の種類、処理方法、処理量などによって変動しますが、適切な熱処理を行うことで、製品の品質や性能を向上させてコスト削減にもつながる可能性のあります。

金属の熱処理は、硬度、強度、延性、靭性などの性質を変化させて、金属の性能を向上させる技術です。

アルミニウムは熱処理によって性質が変化するために、航空機や自動車などの分野で活用されています。

熱処理は、金属の内部構造を制御して性能を調整する技術です。アルミニウムでは、軽量かつ高強度が求められる分野(航空、車両、建築など)で多用されます。ただし、熱処理にはエネルギーや設備のコストが伴うため、最適なプロセス選択が重要です。

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