1円玉はアルミニウムですが、1円玉にはなぜアルミニウムが使われているのでしょうか。また、1円玉はどのような工程で製造され、アルミニウムの材料費や製造コストはどの程度なのでしょうか。
1円玉は、直径20mm、重さ1gのアルミニウム製貨幣です。昭和30年(1955年)から現在のアルミニウム製1円貨が流通しています。
2026年には、2015年度以来11年ぶりとなる1円玉の量産が行われています。ご存知でしょうか・・・スマホ決済が増えているのに1円玉が増産されています。財務省によると、令和8年度(2026年度)の1円貨の製造予定枚数は1億3,200万枚です。
1円玉について、アルミニウムの材質、原料から製品になるまでの製造工程、1円玉の製造コストについて詳しく解説します。
1円玉の材質はアルミニウム
現在の1円玉は、アルミニウムを素材としています。1円玉の基本的な仕様は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 額面 | 1円 |
| 素材 | アルミニウム |
| 直径 | 20mm |
| 重さ | 1g |
| 現在の1円貨の流通開始 | 1955年(昭和30年) |
1円玉の大きな特徴は、軽いことです。重さはちょうど1gなので、1円玉を10枚集めれば約10g、100枚なら約100gになります。
アルミニウムは鉄や銅などと比較して密度が小さく、軽量な金属です。また、加工しやすく、耐食性にも優れています。こうしたアルミニウムの特性は、日常生活で使われるさまざまな製品に活用されています。
なぜ1円玉にアルミニウムが使われているのか?
- アルミニウムには次のような特徴があります。
- 軽量である
- 加工しやすい
- 耐食性に優れている
- 電気を通しやすい
- リサイクルしやすい
- 比較的豊富な元素からつくられる
日本アルミニウム協会によると、アルミニウムは純アルミニウムのほか、銅、マンガン、ケイ素、マグネシウムなどを加えたさまざまな合金として利用されています。用途に応じて、強度、加工性、耐食性などを調整できることもアルミニウムの大きな特徴です。1円玉は合金として強度を高めることを目的とした一般的な工業用アルミ材料とは用途が異なり、貨幣として必要な性質を考慮した素材が使われています。
1円玉はいつからアルミニウムになった?
アルミニウム製1円玉は、1955年(昭和30年)から流通が始まりました。以前にも「1円貨」は存在していました。
戦後の1948年(昭和23年)には、黄銅製の1円貨が製造されました。しかし、材料価格の値上がりなどを背景に1950年(昭和25年)には製造が中止されています。その後、新しい1円貨として登場したのが、現在まで続くアルミニウム製の1円玉です。
造幣局によると、現在の1円貨の図案は公募によって決定され、2,500点を超える応募作品の中から選ばれました。
1円玉の製造工程
造幣局では、貨幣を次のような工程で製造しています。
溶解 → 圧延 → 圧穿 → 圧縁 → 圧印・検査 → 計数・袋詰め
アルミニウムを溶解する
まず、アルミニウムの材料を溶かします。
アルミニウム製品の一般的な製造では、アルミニウム地金などを溶解炉で溶かし、成分を調整したうえで鋳造します。
日本アルミニウム協会によると、アルミニウムの原料となるボーキサイトからアルミナを取り出し、そのアルミナを電気分解することでアルミニウム地金がつくられます。
アルミニウム製品は、ボーキサイト → アルミナ → アルミニウム地金 → 加工製品という流れで生産されています。
圧延して薄い板にする
溶解・鋳造によってつくられたアルミニウムの鋳塊を、圧延機で薄い板に加工します。
圧延とは、2本のロールの間に金属を通し、厚さを薄くする加工方法です。
大手アルミニウム圧延メーカーのUACJでは、アルミニウムの板材について、溶解・鋳造、熱間圧延、冷間圧延、仕上げなどの工程を経て製品を製造しています。
1円玉の場合も、まず貨幣の厚さに合わせた圧延板をつくることが重要になります。
円形に打ち抜く「圧穿」
圧延されたアルミニウム板から、貨幣の形となる円形の金属板を打ち抜きます。
造幣局では、この円形の金属板を「円形(えんぎょう)」と呼んでいます。
まだこの段階では、1円玉の「若木」の模様などは付いていません。造幣局の資料によると、プレス機を使って圧延板から円形を打ち抜きます。
大量生産では、こうした打ち抜き加工を高速かつ正確に繰り返す必要があります。
縁を成形する
次に、円形の金属板の縁を加工します。この工程によって、貨幣として必要な形状・寸法に整えられます。
貨幣は非常に小さな金属製品ですが、直径や厚さ、重量などについて厳密な品質管理が必要です。
圧印して模様を付ける
円形になったアルミニウムに、貨幣の表面・裏面の模様を付けます。
造幣局では「圧印」と呼ばれる工程で、表面と裏面の模様が刻まれた金型で円形を挟み、強い力でプレスします。
これによって、1円玉の「若木」や「一円」「日本国」「製造年」などの模様が形成されます。
つまり、1円玉の模様はインクで印刷されているのではなく、金型によって金属そのものを変形させてつくられています。
検査・計数・袋詰め
最後に、完成した貨幣を検査します。造幣局では貨幣検査機などを使用して、完成した貨幣の品質を確認しています。その後、枚数を数えて袋詰めされ、流通に向けて出荷されます。
アルミニウム製品の製造では「溶解・鋳造」と「圧延」が重要
1円玉の製造工程を理解すると、アルミニウム製品全般の製造方法も見えてきます。
- 日本アルミニウム協会では、アルミニウム製品素材ができるまでを大きく次の3つにわけています。
- アルミナの製造
- アルミニウム地金の製造
- 地金の加工
アルミニウム地金を、圧延、押出、鍛造、鋳造などの加工方法によって、板、箔、管、棒、形材などのさまざまな製品素材へ加工します。
例えば、アルミ板の場合は、溶解・鋳造 → 熱間圧延 → 冷間圧延 → 仕上げという工程が基本になります。
アルミニウムは「軽い金属」というイメージが強いですが、実際の製品になるまでには、溶解、鋳造、圧延、成形、切断、表面処理など、用途に応じたさまざまな加工技術が使われています。
1円玉の製造コストはいくら?
「1円玉は1枚作るのに1円以上かかる」という話を聞いたことがある人も多いでしょう。
実際、1円玉の製造コストについては、額面の1円を上回るという推計がしばしば紹介されています。
ただし、ここでは重要な注意点があります。造幣局は、1円玉を含む貨幣1枚あたりの具体的な製造原価を公表していません。造幣局は、貨幣の製造原価について、貨幣に対する信任の維持や偽造を助長するおそれなどを理由として公表していません。
そのため、「1円玉の製造コストは3円」という数字を公式な確定値として扱うことはできません。
しかし、参議院に提出された質問主意書では、「一円硬貨一枚当たりの製造コストは約三円と言われている」と記載されています。
1円玉の材料費だけなら1円を超えるのか?
1円玉は重さが1gですから、アルミニウムそのものの価格だけを考えれば、1枚の材料に必要なアルミニウムはわずか1gです。
しかし、実際の製造コストはアルミニウムの材料価格だけでは決まりません。例えば、アルミニウム材料の調達費、溶解・鋳造に必要なエネルギー、圧延設備の運転費、打ち抜き加工費、金型・工具の費用、圧印加工費、検査費、人件費、設備の維持費、電力・燃料費、その他の管理費など、さまざまな費用が発生します。
特に貨幣の場合は、一般的なアルミ製品以上に高い品質管理や偽造防止、安定した大量生産が求められますので、単純に「アルミニウム1gの価格=1円玉の材料費」と考えることはできません。
2026年、1円玉が11年ぶりに量産される
2026年は1円玉にとって大きな動きがありました。造幣局は2026年7月、2015年度(平成27年度)以来11年ぶりに1円貨を量産していることを公表しました。
2016年度から2025年度までは、一般流通用の大量生産ではなく、主に販売用貨幣セット分の製造となっていました。
ところが、1円玉の流通状況や摩耗した貨幣の回収状況などを踏まえ、2026年度は流通用の1円貨を大幅に製造する計画となりました。
財務省が2026年9月11日に公表した最新の改定計画では、1円貨の製造予定枚数は1億3,200万枚です。
これは、1円玉が「使われなくなったから製造されない」という単純な話ではありません。
キャッシュレス化が進む一方で、少額の現金決済や釣り銭などに1円玉が必要とされており、流通量や摩耗状況を考慮して新しい貨幣を供給する必要があるためです。
1円玉から分かるアルミニウムの特徴
1円玉は非常に身近な製品ですが、その製造工程にはアルミニウム加工の基本的な技術が凝縮されています。
アルミニウムは、軽量性・加工性・耐食性・成形性などの特徴を持つため、飲料缶、アルミ箔、建築材料、自動車部品、航空機部材、鉄道車両など、幅広い分野で利用されています。
また、アルミニウム製品の製造では、鋳造、圧延、押出、鍛造など、用途に応じたさまざまな加工技術が使われます。
1円玉のような小さな製品でも、アルミニウムを溶かす、板にする、打ち抜く、成形する、模様を付ける、検査するという複数の工程を経て完成します。
参照・引用先
独立行政法人造幣局「貨幣製造工程の仕事」
溶解、圧延、圧穿、圧縁、圧印、検査など、貨幣製造工程を詳しく説明しています。
独立行政法人造幣局「1円の歴史」
1955年からのアルミニウム製1円貨、直径20mm・重量1g、過去の黄銅製1円貨などについて確認できます。
財務省「令和8年度の貨幣の製造枚数を改定しました」
2026年9月11日改定の最新情報。1円貨は1億3,200万枚。この記事では特に重要な一次資料です。
一般社団法人 日本アルミニウム協会「アルミニウムのできるまで」
ボーキサイト→アルミナ→アルミニウム地金→圧延・押出・鍛造・鋳造という、アルミニウム製品の基本的な製造工程を説明しています。
株式会社UACJ「板・箔圧延技術」
鋳造、圧延、押出、鍛造など、アルミニウム加工技術全般について確認できます。
参議院「一円硬貨の維持に関する社会的コストと今後の対応に関する質問主意書」
「1円玉の製造コスト約3円」という数字が公的文書でどのように扱われているかを確認できます。ただし、約3円は造幣局の公式原価ではなく、「約3円と言われている」という記載です。


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