エアコンのアルミフィンについて材質・掃除の注意点とコツ・製造工程を解説

アルミ板 解説

エアコンのフィルターを外すと、中に薄いアルミの板がびっしりと並んでいるのが見えますね。これは「アルミフィン」と呼ばれる熱交換器の部品です。

エアコンの心臓部ともいえるこの部品は、なぜアルミニウムで作られているのでしょうか・・・。また、ホコリやカビで汚れやすい場所でもあるため、掃除の仕方に悩む方も多いではないでしょうか・・・。

エアコンのアルミフィンの役割、使われている材質の種類、フィン材ができるまでの製造工程、そして自分でできるお手入れの注意点とコツまで、詳しく解説します。

エアコンのアルミフィンとは

熱交換器としての役割

エアコンのアルミフィンは、前面パネルとフィルターを取り外したときに見える、薄いアルミ板が何枚も連なった部品(部分)のことです。

「熱交換器」とも呼ばれており、室内機・室外機どちらにも搭載されています。フィンの内部には冷媒が流れる配管(冷媒管)が何本も通っていて、冷媒管が冷たくなったり熱くなったりすることで、フィン全体を通過する空気の温度を調整する仕組みになっています。

フィンが波状や櫛状に細かく並んでいるのは、できるだけ空気に触れる表面積を増やして、熱交換の効率を高めるためです。アルミニウムは熱伝導性に優れ、軽量で加工しやすいことから、この繊細な形状を実現する材料として広く使われています。

室内機と室外機で異なる働き

同じアルミフィンでも、冷房と暖房、室内機と室外機で役割が変わります。冷房時は室内機のフィンが「蒸発器」として空気の熱を奪って冷やして、室外機のフィンが「凝縮器」として室内から運ばれた熱を屋外に放出します。暖房時はこの働きが逆転して、室外機のフィンが外気から熱を取り込む蒸発器、室内機のフィンが暖かい空気を送り出す凝縮器として機能します。

エアコンのアルミフィンに使われる材質

アルミニウム合金(1000系・3000系)

家庭用エアコンのフィン材には、純度99.0%以上の純アルミニウム系である1000系合金がよく使われています。

熱伝導性・加工性に優れていますが、強度はそれほど高くないため、業務用パッケージエアコンなど、より高い強度が求められる用途では、マンガンを添加して耐食性や加工性を保ちながら強度を高めた3000系合金が使われる場合もあります。海外メーカーの一部では、フィン材に3000系合金を採用することもあります。

フィン材はごく薄い板厚(0.08~0.2mm程度)まで圧延されるため、薄くしても破断しにくいプレス加工性の高さが素材選定の重要なポイントになります。

プレコートフィン材とは

現在の家庭用エアコンのフィン材には、あらかじめ工場で表面処理(塗装)を済ませた「プレコートフィン材」が一般的に使われています。プレコート加工には、塗膜を形成する工程を熱交換器の組み立て後に省略できるというメリットがあり、環境負荷の低減にもつながります。

親水性・耐食性を高める表面処理

プレコートフィン材の表面には、用途に応じて複数の機能性皮膜が重ねられています。代表的な機能は次の通りです。

親水性

冷房運転時にフィン表面に付着する結露水を、水滴として玉のように残らせず膜状に広げる性質です。フィンとフィンの間に水滴の橋(ブリッジ)ができると通風抵抗が増え、熱交換効率が落ちてしまうため、親水性皮膜がこれを防ぎます

耐食性

特に屋外に設置される室外機のフィンは、雨水や塩分、浮遊物質の影響で腐食しやすい環境にさらされます。耐食性を高める皮膜を施すことで、アルミ基板の腐食による性能低下を抑えます。海沿いの塩害地域向けには、さらに耐食性を高めた専用仕様の製品も用意されています。

加工性(潤滑性)

プレス加工時の金型摩耗を減らし、フィンの成形不良を防ぐための潤滑機能を持つ皮膜です。

防汚性・自浄性

フィン表面へのホコリの付着を抑えたり、付着した汚れ成分を結露水で洗い流したりする機能を持たせた製品も開発されています。

これらの皮膜は数マイクロメートル単位の薄膜を複数層重ねる「複層化技術」によって作られており、親水性・耐食性・加工性など相反しやすい性能を両立させる工夫がなされています。

アルミフィン材の製造工程

エアコンのフィンに使われるアルミ材は、地金から完成品のフィン形状になるまで、いくつもの工程を経て作られています。

アルミニウムの圧延によるコイル化

まず、アルミニウムの塊(スラブ)を高温で加熱して、圧延機のロールで挟んで圧力をかけながら繰り返し引き延ばしていきます。この工程を経て、板厚0.1mm前後という極薄のアルミ板がコイル状に巻き取られた状態に仕上がります。フィン材は最終製品の中でも特に薄い部類に入るため、圧延中に亀裂や板厚のムラが出ないよう、精密な圧延管理が求められます。

化成処理・塗装によるプレコート加工

圧延された薄板コイルは、連続的に化成処理(下地処理)が施された後、親水性皮膜や耐食性皮膜、潤滑皮膜などを目的に応じて塗り重ねる工程に進みます。コイルを連続的に送りながら塗装・乾燥を行うコイルコーティングという方式で、大量生産と品質の均一化が両立されています。この段階で仕上がった材料が「プレコートフィン材」として熱交換器メーカーに供給されます。

プレス加工によるフィン成形

熱交換器メーカーでは、供給されたプレコートフィン材をプレス金型に通して、波型やスリット状の細かい凹凸形状に打ち抜き・成形していきます。この工程で、冷媒管を通すための穴もあわせて打ち抜かれます。フィン材表面の潤滑皮膜は、この成形時に金型とフィンの摩擦を減らし、塗膜の傷つきや剥離(カラー飛び)を防ぐ役割も担っています。

冷媒管とのろう付け・拡管接合

成形されたフィンを積み重ねて、内部に冷媒管を通した後、フィンと冷媒管を密着させて熱をしっかり伝えられるように接合します。

接合方法には、冷媒管を機械的に押し広げてフィンに密着させる「拡管」や、加熱によって金属同士を接合する「ろう付け」があります。ろう付けでは、アルミニウムの融点(約660℃)に近い580~605℃という狭い温度域を精密に制御する必要があり、高い技術力が求められる工程です。近年は、従来銅管が使われていた部分もアルミ管に置き換える「オールアルミ熱交換器」の開発と量産化が進み、材料コストの低減が図られています。

エアコンのアルミフィンの掃除・お手入れの注意点とコツ

アルミフィンが汚れる原因

エアコンは室内の空気を吸い込む際に、空気中のホコリも一緒に取り込みます。フィルターで大部分は防げるものの、取りこぼした細かいホコリはフィンの凹凸部分に絡みつきやすく、汚れが蓄積していきます。加えて、冷房運転中はフィンが急激に冷やされることで結露が発生し、エアコン内部が高温多湿な環境になります。この湿気とホコリが合わさることで、カビが繁殖しやすい条件が整ってしまうのです。

汚れを放置すると・・・

フィンにホコリやカビが蓄積すると、空気の通り道がふさがれて通風抵抗が増し、冷暖房の効きが悪くなります効きが悪くなった分だけ余計な運転時間や消費電力がかかることにもつながります。また、カビや汚れが臭いの原因となり、送風時に不快なニオイが発生することもあります。

お手入れ

ご家庭でお手入れできるのは、基本的にはフィルターや吹き出し口の外側など、手の届く範囲に限られます。

フィルターはおおむね2週間に1度を目安に取り外し、掃除機でホコリを吸い取ったり、水洗いしたりするのが一般的なお手入れ方法です。水洗いしたパーツは、生乾きのまま取り付けると臭いやカビの原因になるため、必ず日陰でしっかり乾かしてから戻すことが大切です。

フィルターを外した先にあるアルミフィン本体は、メーカー各社が「お客様によるお手入れはできない」としている部分です。フィンは薄いアルミ板が密集した非常に繊細な構造で、力を加えると簡単に変形してしまいます。また、内部には電装部品や基板もあるため、水や洗剤が誤ってかかると、故障や水漏れの原因になりかねません。

市販の洗浄スプレーがすすめられない理由

「フィン専用」などとうたった市販の洗浄スプレーも販売されていますが、大手空調メーカー各社はいずれも、こうしたスプレーの使用を推奨していません。誤った方法で洗浄すると、部品の破損による水漏れや電気部品の故障、最悪の場合は発煙・発火につながるおそれがあるためです。

スプレーの薬剤が電装部やセンサーにかかるとショートの原因にもなり、洗浄剤が内部に残ったままだとホコリや湿気と合わさってかえって汚れやトラブルを悪化させることもあります。フィン本体の内部洗浄については、購入した販売店やメーカーの窓口、専門のクリーニング業者に相談するのが安全です。

フィンの曲がりを見つけたときの注意点

外装パネルの取り外し作業中に誤って手や工具が触れたり、経年劣化で強度が落ちたりすることで、フィンの一部が曲がってしまうことがあります。フィンが変形すると、風の通り道が乱れて熱交換効率が下がる原因になります。無理に指で押し戻そうとすると、目を痛めたり範囲を広げてしまったりすることがあるため、フィンの隙間に沿って軽くなでるように整えられる専用の「フィン修正ツール(フィンコーム)」を使うのが基本です。専用工具を使う場合も、力を入れすぎず、フィンの並び方向に沿って丁寧に扱うことが変形防止のコツです。

プロのクリーニングを検討する目安

フィルターのお手入れをこまめに行っていても、フィン本体の内部までは構造上どうしても汚れが蓄積していきます。冷暖房の効きの低下や、運転開始時の臭いが気になり始めたら、フィン内部の洗浄が必要なサインと考えてよいでしょう。専門業者によるクリーニングでは、ドレンパンを取り外した上で高圧洗浄機を使い、フィンの奥まで詰まった汚れやカビを効率的に除去する方法がとられています。目安として、1年に1度程度の専門クリーニングを検討すると、エアコンを長く快適に使い続けやすくなります。

参照・引用先

一般社団法人 日本アルミニウム協会「アルミニウムとは」(アルミニウムの熱伝導性・軽量性などの基礎特性について)


一般社団法人 日本アルミニウム協会「アルミ材料の諸特性データベース」

株式会社UACJ「超親水性プレコートフィン」製品紹介(プレコートフィン材の役割・開発背景について)

株式会社UACJ「アルミニウムブレージングシート(BR材)」製品情報(ろう付け材料について)

株式会社神戸製鋼所(KOBELCO)「熱交換器用プレコートアルミフィン材」(フィン材の合金種類・表面処理技術・機能一覧について)

ダイキン工業株式会社「エアコンのお手入れについて(ルームエアコン)」(お客様がお手入れできる範囲について)

ダイキン工業株式会社「市販の洗浄スプレーは使えますか?(ルームエアコン)」

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