アルミニウムのサーキュラーエコノミーとは?環境問題対策・低炭素社会実現

解説

アルミニウムは循環型社会を支える「究極のリサイクル素材」として注目をあびています。

その理由としては、何度もリサイクルできるうえ、品質が劣化しにくいこと、リサイクルで二酸化炭素の削減効果が大きいという特性があるからです。

また、特に日本はアルミの多くを輸入に頼っているために、国内でのアルミ循環システムの強化は、エネルギー安全保障の観点からも重要になります。

アルミはサーキュラーエコノミーの中心にある金属と言えます。それでは詳しく解説します。

サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは、資源を「採取→製造→消費→廃棄」という流れではなく、「資源を循環させ、廃棄物を最小化する」経済モデルのことです。

従来の使い捨て型経済とは大きく異なり、資源の再利用・再生利用・修復を基盤にして、環境負荷を抑えつつ持続可能な生産活動を目指します。

アルミニウムは、サーキュラーエコノミーの素材となる循環利用に適した中心的な金属です。

アルミニウムがサーキュラーエコノミーに最適な理由

リサイクルしても品質が劣化しない

アルミニウムは、鉄やプラスチックと違って、リサイクルしても金属としての特性がほとんど劣化しませんので、アルミ缶から建材、建材から自動車部品というように、異なる用途間での「水平リサイクル」が可能になります。

リサイクル時のエネルギー使用量が大幅に少ない

原料のボーキサイトから新地金をつくるには膨大な電力が必要ですが、リサイクルアルミは、一次生産の約3%~5%のエネルギーで製造できます。二酸化炭素の排出量も大幅に削減できて、脱炭素社会の実現に大きく貢献できます。

経済的価値が高い

スクラップとなったアルミには市場価格がついて、鉄スクラップよりも高価なことが多いです。金属として価値が落ちにくい金属ですから、回収やリサイクルのビジネスモデルが成立しやすいという特徴があります。

アルミニウムの主なリサイクルルート

アルミ缶

日本は世界でも有数のアルミ缶リサイクル先進国で、回収率は約90%台を越えています。回収された缶は溶解されて、新たな缶や自動車部品に生まれ変わります。

自動車用アルミ

自動車の軽量化需要によりアルミ使用量は増えています。廃車時に回収されて、再び自動車部品や建材として利用されます。

建材やアルミサッシのリサイクル

建材用アルミは耐久性が高くて、数十年使用されるため、回収時には大量の高品質スクラップが出てきます。

工業スクラップ

製造工程で発生する端材(新切粉・プレス片)はほぼ100%がリサイクルされます。

サーキュラーエコノミーを加速するアルミの技術・仕組み

トレーサビリティ(材料管理)

アルミは圧延したものでも、加工品でも純アルミだけではありません。むしろ、強度や加工性を向上させるためにアルミ以外の添加元素を加えているのが一般的です。

アルミスクラップはアルミ合金に入っているシリコン(Si)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)など合金成分が製品に影響するため、AI選別機や光学選別機により合金ごとに高度に分類されます。これにより、より高品質な水平リサイクルが可能になります。

低炭素アルミ(グリーンアルミ)の普及

世界では、水力発電を利用した低CO2アルミの生産が増えて、日本でも自動車・飲料メーカーが採用をすすめています。さらに、リサイクル比率の向上と組み合わせた“超低炭素アルミ”も増加中です。

クローズドループリサイクル

企業が自社製品のスクラップを回収して、自社の新製品に戻すルートを構築する仕組みのことです。

たとえば、飲料メーカーがアルミ缶を再びアルミ缶にするとか、自動車メーカーが車体スクラップを次世代モデルへ再利用するとかです。

アルミニウム産業と企業に求められる取り組み

自治体や企業との協力による回収効率向上が必要ですし、アルミ缶の回収率は90%を超えているように高い水準となっていますが、飲料缶以外のアルミ製品回収が今後の課題です。

また、合金の種類が多すぎるとリサイクル効率が下がるために、自動車業界などでは「リサイクルしやすい合金」の導入がすすんでいます。

分解しやすい構造や、素材が単一であること(モノマテリアル化)を設計段階で組み込むことでも、回収・選別・再生の効率を向上させることができます。

さらに、ISO認証や成分管理データベースを用いて、サプライチェーン全体で循環材を信頼できるものにする取り組みが重要になります。

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