NECと富山大学のAIを利用したアルミニウムのアップグレードリサイクル

解説

NECと富山大学が共同で取り組んでいる廃棄アルミニウム再生技術は、リサイクルの課題を解決して、アルミニウム産業の未来を変える可能性を秘めた重要な取り組みです。

この共同研究は、単なるリサイクルではなく、「アップグレードリサイクル」の実現を目指しており、実現にはAI(人工知能)が重要な役割を果たしています。

金属などのリサイクル再生は、コストがかかって品質がダウングレードされてしまうというのが常識でしたが、再生アルミの高品質化と製造コスト・エネルギー消費の削減という夢のようなプロジェクトです。

アルミに限らずリサイクル社会の推進は環境問題解決のための喫緊の課題です。それでは詳しく解説します。

プロジェクトの目的である「アップグレードリサイクル」

アルミ缶の回収など、日本のアルミニウムリサイクル率はかなり高いですが、現状は、品質の劣るアルミニウム製品に再生される「ダウンサイクル」が発生しがちです。

このプロジェクトは、低品質なアルミスクラップや不純物が多く含まれる廃材から、自動車や航空機などに使われるような高品位な再生アルミニウム合金(地金)を作り出す「アップグレードリサイクル」を目標としています。

AIを用いた「含有成分解析と最適な精錬手順」

生成AIの活用は、リサイクルの初期段階であるスクラップの「選別」と、それに続く「精錬プロセス」の最適化の二つの側面ですすめられています。

初期選別におけるAIの役割

再生アルミニウムの品質は、スクラップに混入した不純物(特に銅、ケイ素、マグネシウムなどの添加元素)の含有にあります。これらの元素の含有量が合金の種類によって異なるため、異なる合金が混ざると再生品の品質が低下してしまいます。

NECの先端的な画像処理AI技術と富山大学の知見を組み合わせて、回収されたアルミスクラップの形状、色調、表面の質感といった特徴を高速で解析します。

従来のX線分析などの既存技術とAIによる画像解析を組み合わせることで、スクラップを合金の種類ごとに高精度・高速で選別します。選別精度が向上することで、不純物の混入が最小限に抑えられて、その後の精錬(不純物を取り除く工程)の負荷が軽減されるというわけです。

精錬手順の最適化におけるAIの役割

スクラップが高精度に選別された後、それを溶解して、不純物を取り除く精錬プロセスにすすみます。

選別によって得られたスクラップの含有成分データ(AIが解析・予測した不純物の種類と量)に基づき、AIが「不純物を最も効率的かつ低コストで取り除くための最適な精錬手順」を生成します。

具体的には、溶融温度、精錬剤の添加量や種類、処理時間といったパラメータを、エネルギー消費が最小限になるようにシミュレーションし、最適な組み合わせを導き出します。

このようにして、富山大学が持つアルミニウムアップグレードリサイクル技術(不純物を分離するプロセス)の実用化に向けた知見と、NECのAI技術が結びつくことで、より効率的な不純物分離プロセスの構築が目指されています。

NECと富山大学の共同研究の詳しい背景については、こちらの動画もご参照ください。
「世界が挑戦するアルミの「アップグレードリサイクル」 富山大とNECの共同研究が始動」

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