磁石にくっつく金属といえば鉄ですが、アルミニウムや銅のような金属はどうでしょうか?アルミも銅も磁石にはくっつきませんが、これは、その金属の「磁性」の種類に関係しています。それでは詳しく解説します。
なぜくっつかない?
金属が磁石にくっつくかどうかは、「磁性」と呼ばれる性質によって決まります。
磁性には3種類あります。
強磁性体で、鉄、コバルト、ニッケルが該当します。強く磁石に引き寄せられて、磁石にもなります。
常磁性体で、アルミニウム、マグネシウム、タングステンなどですが、わずかに磁石に引かれるが、非常に弱いです。
最後に反磁性体で、銅、金、銀などです。磁石にわずかに反発する性質をもっています。
磁石にしっかりくっつくのは「強磁性体」だけで、アルミや銅は磁石には反応しにくい、ほとんど反応しません。
金属が磁石に強く引きつけられる性質を強磁性と呼んでいますが、鉄、ニッケル、コバルトの3元素がそれに該当します。これらの金属の原子は、内部の電子(不対電子)のスピンが一定の方向に揃いやすく、強い磁気モーメント(小さな磁石)を形成します。外部から磁石を近づけると、これらの磁気モーメントが一斉に磁場と同じ方向に揃うため、磁石に強く引き寄せられるのです。

アルミニウムの場合
アルミニウムは常磁性体です。常磁性体は、磁石を近づけると、わずかに引き寄せられる性質をもっていますが、その力は非常に弱くて、日常生活ではほとんど感じられません。
アルミホイルやアルミサッシに磁石を近づけても、手で触れても動かないほど微弱な磁力しか働きません。
しかし、特定の条件では磁気的な反応を示すことがあります。強力な電磁石を用いたり、磁石を高速で動かしたりすると、渦電流(うずでんりゅう)が発生して磁石を押し返す力が生じます。これは電磁誘導による現象で、非磁性体でも磁場の変化に反応するために起こります。
そこで、アルミの用途としては、この「磁石にくっつかない」という特性を利用して、HDD(ハードディスクドライブ)のディスク基材や、磁気シールドが必要な電子機器の筐体など、磁気の影響を排除したい分野で活用されているわけです。
銅の場合
銅は反磁性体です。反磁性体は、磁場の中で磁石にわずかに反発する性質を持つ物質ですが、反発の力は非常に小さいため、肉眼では磁石にくっつかないように見えます。
銅もアルミ同様に電気伝導率が高いため、磁石を動かすと渦電流が発生して、磁石が「抵抗を感じる」ような現象が見られます。
アルミも銅もまったく磁石に反応しないの?
アルミは常磁性、銅は反磁性なので、どちらも磁場の影響をわずかに受けます。特に電磁誘導による「渦電流効果」では、磁石の動きが遅くなったり、金属が押し返したりといった現象が観察できます。くっつかないですが、磁場には反応するというのがアルミや銅の特徴です。
なお、アルミニウム合金の場合ですが、アルミニウムや銅に、わずかでも鉄やニッケルなどの強磁性元素が不純物や合金成分として含まれていると、磁石にくっつくことがあります。
また、加工の影響として、銅やアルミニウムに強い圧力をかけるなどの冷間加工などの加工を行うと、一時的に原子の並びが変わり、ごくわずかに磁性が現れる可能性があります。
非鉄金属でも磁石にくっつく金属は?
アルミや銅などの非鉄金属は基本的に磁石にくっつきませんが、例外的に一部のニッケル合金やコバルトを含む金属は磁石に反応します。
非鉄金属という言葉は「鉄を含まない金属」という意味ですが、磁性の有無は元素の種類や結晶構造に左右されるため、非鉄金属が、すべて非磁性というわけではありません。
Q&A
まとめをかねてQ&Aをつくりました。参考にしてください。



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