アルミニウムとリチウムの新合金、軽量化と高強度の次世代素材

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アルミとリチウムの新合金が注目されています!

航空機や宇宙開発、自動車の軽量化需要に応えるアルミ素材として注目されているのがアルミニウム・リチウム合金(Al-Li合金)です。

軽量化と高剛性を同時に実現できる画期的な素材として航空宇宙分野を中心に採用がすすんでいます。

アルミニウムに微量のリチウムを加えることで、比重を下げて、剛性や比強度を向上させます。世界的に開発・実用化がすすんでおり、燃費改善や積載効率向上の効果があるアルミ素材です。

軽量化が直接競争力につながる分野では、Al-Li合金は有力な選択肢のひとつになっています。

アルミニウム・リチウム合金は、「軽量化」と「高剛性化」という航空機設計の二大目標を高いレベルで両立する戦略的な材料です。コストは高いものの、第3世代合金の実用化により、今後の航空宇宙産業における主力の構造材料の一つとしての地位を確立しつつあります。

開発の目的

リチウム(Li)は金属の中で最も密度が低い金属の一つですが、アルミニウムにリチウムを添加すると、密度が大幅に低下しますので同じ体積であっても、より軽い材料が得られます。これにより、航空機の機体重量を軽減できます。

アルミニウム・リチウム合金(Al-Li合金)の開発の最大の目的は、従来の航空機用アルミニウム合金(2000系、7000系など)を上回る特性を実現して航空機の性能向上と燃費改善に貢献することです。

また、リチウムを添加すると弾性率(剛性)が高まり、より薄くても強度を確保できる点も大きな魅力です。

リチウムは、アルミニウムの弾性率(ヤング率)を高める効果があります。弾性率が高いと、同じ応力に対して変形しにくくなり、機体の剛性(曲がりにくさ、たわみにくさ)が向上します。

航空機メーカーにとっては、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)よりも低コストで修理性が高い選択肢として、Al-Li合金が選定されるようになってきています。

実用化の進捗:第三世代Al-Li合金の登場

Al-Li合金の研究は1970年代から始まりましたが、初期世代は脆さや腐食問題が課題でした。現在はリチウム含有量を抑えた「第三世代」が主流で、航空宇宙分野で本格的に採用されています。

高性能ですが高コストで少量だけ利用というイメージだったAl-Li合金は、より実用化段階に入っています。

航空機での採用例

Airbus A350・A380の一部、Bombardier CSeries(現Airbus A220)、Boeingの一部構造材などがあります。

宇宙開発

SpaceXの燃料タンクなどロケット用途などがあります。

その他産業動向

ArconicやConstelliumなど大手メーカーが大寸法インゴットや幅広圧延技術を確立し、量産供給体制を強化されています。

特徴と利点

軽量性

リチウム添加することで密度が低下して、重量の削減が可能になります。

剛性・強度の向上

強度を維持しながら部材を薄肉化できます。

疲労特性

引張強度は高い一方で、圧縮疲労や破壊靭性の課題があるため設計上の工夫が必要になっています。

接合技術

従来の溶接は欠陥リスクが高いために摩擦撹拌接合(FSW)が主に利用されています。

加工適性

最新の研究では3Dプリンタ用粉末(LPBF/SLM向けAl-Li系合金)も開発がすすんでおり、複雑形状部品にも応用可能になっています。

コストと価格動向

Al-Li合金は、製造難易度の高さやリチウム原料価格の影響を受けやすく、従来は通常のアルミ合金の数倍以上の価格となっていました。

航空機用に使用される高純度材では、数十ドル/kgから数百ドル/kgと幅広い価格帯があります。

また、EV電池需要の影響でリチウム市況が大きく変動して、価格が不安定な面もありますが、リサイクル技術やスクラップ回収がすすめば、ライフサイクルコストの低減につながる期待もあります。

課題と注意点

腐食や脆化リスク

表面処理や合金設計で補う必要があります。

設計制約

圧縮荷重や疲労条件に注意した設計が必須です。

品質管理

溶解や熱処理条件を厳格に管理しなければ不良が出やすい傾向があります。

サプライチェーンリスク

リチウム市況に依存するために中長期的な供給契約が望ましくなります。

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