ヨーロッパの場合のアルミ産業関連の協会・団体について日本アルミニウム協会との比較などを中心に質問がありましたので、ヨーロッパの欧州アルミニウム協会(European Aluminium)について信頼できる情報から詳しく調べてみましたのでご報告いたします。
欧州アルミニウム協会とは
設立・組織概要
欧州アルミニウム協会(European Aluminium)は 1981年設立、ベルギーのブリュッセルを拠点とする業界団体です。欧州のアルミニウム産業界の代表組織として設立されました。
メンバーは「一次アルミニウム生産業者」「二次加工・押出・鋳造などの製造業者」「リサイクル業者」「各国のアルミニウム協会」などで、ヨーロッパの約30か国、600を超える生産拠点になっています。
(参照先)
欧州アルミニウム協会
https://european-aluminium.eu/
目的・役割
欧州アルミニウム協会(European Aluminium)はアルミニウムの優れた素材特性を広く紹介することで、アルミの利用の促進、アルミ産業の成長を支援しています。
アルミニウム産業の利益を代表する組織であり、アルミニウムの普及と持続可能な利用促進のために活動しています。
さらに、持続可能性、環境・技術的な分析、政策の提言、統計調査、研究、教育、ベストプラクティスの共有を通じて、ヨーロッパ全体でのアルミニウム業界の競争力と産業的、環境的責任を強化することを使命としています。
日本では「日本アルミニウム協会」が中心団体です。研究調査、統計提供、需要拡大のPR、国の審議会への参加などを行っていますが、欧州ほど「産業戦略の大きな枠組み(EUのグリーンディールなど)」と一体化した動きは弱めです。
(参照先)
一般社団法人 日本アルミニウム協会
https://www.aluminum.or.jp/
日本と欧州との比較ですが、欧州は自国内で精錬などの一次生産も含めて脱炭素化を目指すのに対して、日本は輸入に依存しているためにリサイクルの強化が主となっています。

アルミニウムについて
アルミニウムの役割と重要性
環境にやさしいアルミニウムは自動車、建築、包装、航空・宇宙、再生可能エネルギー技術など、欧州のグリーン・トランジション(環境転換)およびレジリエンス(環境回復力)の中心的な素材です。
・素材としての特徴
軽さ、耐久性、成形性、導電性などがあり、何度でもリサイクル可能で、アルミの特性を失わない特徴を持っています。リサイクルに適した素材ということです。
・環境面・循環性
リサイクルによって一次生産(初回のアルミの生産)と比べて劇的にエネルギー消費を削減できます。一次生産(初めてアルミをつくる生産)のわずか5%程度のエネルギーで済む)などの環境優位性があります。ともて環境にやさしい金属です。
・循環型アルミニウム行動計画
EU の「Circular Aluminium Action Plan(循環型アルミニウム行動計画)」により、2030年までに廃棄後のアルミ製品を効率よく回収・リサイクルして、素材が欧州内で循環することを目指しています。
ALUMINUM ACTION PLAN(アルミニウム行動計画)
計画は公式には “An Action Plan for European Aluminium: Strategic Metal, Strategic Action” として策定されており、ヨーロッパのアルミニウム業界が直面する課題を克服して、産業の持続可能性と競争力を強化するための政策的優先事項を提示しています。
主な内容は次の5つのステップから成っています。
ステップ | 内容 |
---|---|
1. エネルギーコストの抑制(Tackle energy costs) | 電力・エネルギーの価格が競合他国に比べて高いため、低炭素エネルギーを安価に調達できるようにすること。再生可能エネルギー導入の促進、変動する再エネ供給と産業のベースロード(常時稼働電力需要)のマッチング、エネルギー集約型産業への補助・割引など。 |
2. 脱炭素化支援(Support decarbonisation efforts) | 2050年気候目標に向けて、一次生産の排出量を93%削減するために必要な資金(少なくとも 330億ユーロ規模)を確保すること。欧州の補助金制度・国の支援を整え、政策・規制枠組みを整備すること。 |
3. 炭素漏出(carbon leakage)対策の強化 | CBAM(Carbon Border Adjustment Mechanism:国境炭素調整措置)の現状設計ではアルミ業界の炭素漏出リスクを十分に防げていないとの指摘。回避の可能性をなくし、間接排出や下流製品も含めた製品範囲の拡大などが必要。 |
4. 原料の確保と循環性の促進(Secure raw materials and boost circularity) | 国内外からの原料確保および再生アルミニウム(スクラップ)の活用を推進。スクラップの輸出を抑え、分別・回収・前処理・再処理技術を強化する。 |
5. 貿易・外部競争への対応(Stand firm on trade) | 中国など国による国家補助や過剰生産との競争が脅威。EU の貿易防御措置強化、非市場経済貿易体制の見直し、自由貿易協定(FTA)の見直し等を通じて保護と競争力確保を図る。([European Aluminium][3]) |
その他 | あれば追記します。 |
目的
この行動計画は、ヨーロッパがグリーン転換・産業戦略においてアルミニウムを中心素材として位置づけ、脱産業化(deindustrialisation)の逆行、気候変動対策の加速、そして素材自給力・戦略的自律性を確保することを目的としています。
欧州アルミニウム協会の活動
政策提言
EUや各国政府と連携して、エネルギー政策、炭素排出規制、貿易政策、原料・リサイクル政策などについて業界の立場を明確に伝え、政策設計に影響を与えます。
循環経済・リサイクル促進
「Circular Aluminium Action Plan」を通して、高品質なスクラップの回収・分別・リサイクルの体制強化、廃車車両からのアルミ回収、飲料缶の回収率向上等を実施します。
リサイクルですが、日本ではアルミ缶リサイクル率は90%を超え世界最高水準になっています。ただし、自動車や建築廃材など大型スクラップはまだ十分に循環していない部分があります。海外へのスクラップ輸出も多いのが特徴です。
欧州は「域内循環」、日本は「リサイクル率は高いが一部は輸出」という点で違いがあります。
研究・データ収集・環境技術
アルミニウムのライフサイクル分析、環境プロファイルの作成、排出量削減のシナリオモデル(例、Vision 2050)などを公開します。
会員ネットワークの構築・支援
メンバー間でのベストプラクティス共有、技術的支援、政策情報の共有、ワークショップ・セミナー等を通じて業界内の連携を強化します。
報告・啓発活動
アルミ業界の状況・課題を報告書やプレスリリースで発信して、一般の理解を深めたり政策決定者へ働きかけます。特に、アルミの環境特性・脱炭素対応の重要性をアピールします。
Q&A
まとめを兼ねてQ&Aをつくりました。参考にしてください。
コメント