太陽光発電で、いま最も注目されている技術の一つが「ペロブスカイト太陽電池」です。
軽量で低コスト、さらにフレキシブルという特徴から、従来のシリコン型を補完あるいは代替する太陽電池として世界中で研究開発がすすんでいます。
このペロブスカイト太陽電池に、アルミニウムはどのように関わっているのでしょうか?詳しく解説します。
電極としてのアルミ ― コスト削減の切り札
ペロブスカイト太陽電池は、光を吸収するペロブスカイト層を「透明電極」と「金属電極」で挟み込む構造しています。
金属電極には金(Au)や銀(Ag)が用いられることが多いですが、これらの希少金属は高価で資源的にも限られています。
そこで注目されるのがアルミニウムです。アルミは軽量で導電性が高く、価格も安いために、もし実用化できれば発電コストを大幅に下げることが期待されています。再生可能エネルギーの普及にとって、ここでもアルミはコストダウンでも注目を集めています。
ただし、アルミをペロブスカイト層に直接接触させると化学反応が起こって性能劣化や寿命の短縮につながるので、酸化モリブデン(MoOx)やフラーレン誘導体(C60)などのバッファー層を挟み込んで安定性を高める技術を模索しているところです。
酸化モリブデンとは、モリブデンと酸素が結合した化合物の総称で、触媒、金属モリブデンやモリブデン化合物の原料、金属表面処理剤、潤滑剤など、幅広い分野で利用されています。
フラーレン誘導体は、フラーレンという炭素の同素体に、他の有機分子を結合させた化合物のことです。フラーレンは、炭素原子が球状に結合した構造を持つ物質で、電子を受け取りやすい性質(n型半導体)を持つため、有機エレクトロニクス材料として研究されています。
酸化アルミの利用
アルミそのものが直接の電極としては課題がありますが、酸化アルミはペロブスカイト太陽電池の耐久性を高める材料として活用されています。
酸化アルミニウムは、アルミナと呼ばれていますが、白色の粉末で、化学的に安定で、耐熱性、高硬度、電気絶縁性などの特性を持つセラミックス材料のことです。多くの産業分野で、耐火物、研磨材、触媒、電子部品、構造材料など、幅広い用途に利用されています。
酸化アルミの薄膜は水分や酸素の侵入を防ぐバリアとして機能してペロブスカイトの耐湿性の低さを克服するのに効果的です。特に原子層堆積法(ALD)で作られた酸化アルミ膜は緻密で均一性が高く、フレキシブル型や窓ガラス型の太陽電池で注目されています。
ナノ技術で効率を高めるアルミ応用
アルミのナノ粒子を利用して光を散乱、増強させて発電効率を引き上げる研究もすすんでいます。これはプラズモニクス効果という現象を利用しています。
また、アルミをドーピングした酸化亜鉛(AZO)は、透明導電膜として利用可能で、インジウムを使うITOの代替候補として期待されています。資源リスクを下げるということでも、アルミの役割は大きくなっています。
実用化
商用化段階にきているペロブスカイト太陽電池では、金や銀が主に使われていますが、高価で量産化にはあまり適していません。
安価で長寿命のペロブスカイト太陽電池を普及させるには、アルミニウムや酸化アルミの活用が重要になってきます。
アルミは、ペロブスカイト太陽電池で直接使うと劣化のリスクがありますが、バリア層やナノ技術を通じて安定性や効率性を支える重要な役割を果たします。
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