ガリウムはアルミを脆化、腐食?危険なの?

A2017とA5052の違いについて強度、耐食性、切削加工性及び溶接性 解説

軽くて加工しやすいアルミニウムは、日常生活のあらゆる場面で利用されていますが、「ガリウム」という金属と接触すると、著しく脆くなるという性質があります。

ガリウムの基本的な性質から、アルミとの関係、そして取り扱い上の注意点を詳しく解説します。

ガリウムとは

ガリウム(元素記号:Ga)は、原子番号31の銀白色の軟らかい金属です。融点が約29.76°Cと低く、手のひらにのせただけで溶けて液体になってしまいます。学校の実験でも使われることがあります。

ガリウムが使われているもの

ガリウムは、私たちの身の回りのいろいろな製品に使われています。

半導体

ガリウムヒ素(GaAs)や窒化ガリウム(GaN)は、高周波デバイスやLED、パワー半導体などの半導体材料として利用されています。スマートフォンやパソコン、照明器具などに搭載されます。

合金

ガリウムは、融点の低い合金を作るために使われます。体温計や医療機器、歯の詰め物などに使われることがあります。

その他

太陽電池や熱伝導材料としても利用されます。

アルミを脆化させる

ガリウムはアルミを脆化させます。ガリウムがアルミニウムの結晶粒界に侵入してアルミニウムの原子間の結合を弱めます。

少量のガリウムがアルミの表面に付着すると、ガリウムが液体になる温度(約30℃)以上に温められることで、アルミニウムの結晶粒界に沿って急速に浸透していきます。

これでアルミの強度が低下して、粉々に砕けるかのように脆くなってしまいます。アルミが多く使われている航空機の部品や構造物にガリウムが付着した場合に危険な状況を招く可能性があります。

腐食や毒性など注意すること

ガリウム自体は、一般的に人体に有害な毒性はないとされていますが、いくつかの注意点があります。

腐食

ガリウムは、アルミ以外の金属に対しても腐食性を示す場合があります。鉄やステンレス鋼、銅などの金属と反応する可能性があります。

皮膚への影響

ガリウムは融点が低いので皮膚に付着するとすぐに溶けてしまいます。皮膚に付着したガリウムを長時間放置すると、皮膚の表面を傷つける可能性があるため、速やかに洗い流します。

摂取

ガリウムは誤って摂取すると、消化器系に影響を及ぼす可能性があります。

環境への影響

ガリウムは、土壌や水中に漏れ出ると環境に影響を与える可能性があります。

ガリウムはこのような物性を持つ金属で、半導体や電子材料の分野では欠かせない存在ですが、アルミと接触すると脆化させてしまうというリスクがあるため、取り扱いには十分な知識と注意が必要です。

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