低炭素アルミ、ローカーボンアルミとは?脱炭素社会とアルミ

解説

アルミニウムは、自動車、航空機、建設資材、包装材など、幅広い分野で利用される軽量で耐久性に優れた素材ですが、製造には大量の電力を必要とし、精錬で多量のCO2が排出されるという課題があります。低炭素アルミは、製造過程におけるCO2排出量を最小限に抑えることを課題としています。

低炭素アルミとは

低炭素アルミ(ローカーボンアルミ)とは、アルミニウムの製造過程で排出される二酸化炭素(CO2)を従来よりも大幅に削減したアルミニウムのことです。

従来のアルミ精錬では、多くの電力と熱エネルギーを必要とするために1トンのアルミを生産する過程で平均約10~12トンのCO2が排出されるとされています。低炭素アルミはこのCO2排出量を、主に以下の手法で30~80%削減したものです。

  • 低炭素アルミは主として次の方法でつくられています。
    • 水力や太陽光などの再生可能エネルギーによる電解精錬
    • リサイクル原料(スクラップ)の利用
    • 精錬設備や炉の省エネルギー化・高効率化

低炭素アルミの精錬・製造方法

アルミニウムの製造は大きく分けて、ボーキサイトからアルミナをつくるアルミナの精製とアルミナからアルミをつくるアルミの電解精錬の工程があります。

CO2の排出の大きいのが電解精錬です。火力発電の電力を使っているので、CO2の排出量が膨大となりますが、低炭素アルミの製造では、次のような技術が使われます。

再生可能エネルギーによる電解精錬

ノルウェーやカナダでは水力発電を利用しており、CO2の排出が少ない。

インゴット再生(リサイクルアルミ)

使用済みのアルミ製品や端材を再溶解して再利用すると原料からの製造に比べてCO2排出量を95%以上削減できます。

無炭素陽極(カーボンフリーアノード)

陽極にカーボン(炭素)を使っており、これでCO2発生していましたが、酸素のみを排出する新素材をアルコア社などが開発中。

低炭素アルミのコスト

低炭素アルミは、従来のアルミよりもコストが高くなります。再生可能エネルギー由来の電力コストが高い国や地域があり、高度なリサイクル技術や設備投資が必要となるためです。

また、CO2のトレーサビリティやCO2排出量の認証・管理にかかるコスト、カーボンフットプリント認証などでコストもかかります。

現状では、低炭素アルミの生産量がまだ限られており、スケールメリットがないことなどもあげられます。

しかし、カーボンプライシング制度の普及や、ESG投資、グリーン調達の加速によって、「低炭素アルミ」は将来的に市場での優位性を持つと考えられています。

低炭素アルミの問題点

低炭素アルミにはいくつかの課題や懸念もあります。

原産地の偏在性

水力発電など再エネを利用できる地域(例:北欧、カナダ、中国の一部など)に生産が集中しやすく、地政学リスクや輸送問題も懸念される。

「見せかけの低炭素(グリーンウォッシング)」

製品単位のCO2の排出量を正確に測定・表示することは難しく、企業によっては「低炭素」をうたっていても実態が伴わないこともある。

リサイクル材の品質やトレーサビリティ

高純度が求められる分野(航空・半導体部品など)では、リサイクル材の使用が難しいこともある。

高コストによる市場浸透の遅れ

価格競争の激しい分野では、低炭素アルミの導入が進みにくい。

低炭素アルミの今後

今後、低炭素アルミは次の分野で広がりを見せると考えられています。

EV・自動車産業

車体軽量化と脱炭素ニーズを両立できるため、アルミの採用が加速しています。

建築・住宅資材

ゼロエネルギービル(ZEB)やグリーン建材の需要増加によってCO2排出の少ない資材として採用が進む。

IT・家電メーカーによる採用

AppleやDellなどが積極的にリサイクルアルミや低炭素素材を採用して、ブランド価値の向上を図っている。

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