アルミニウム板の曲げ加工について、基本から適切な材質選定、加工方法、注意点まで詳しく解説します。
アルミの曲げ加工とは
アルミの曲げ加工とは、アルミニウム板を機械器具によって角度をつけて変形させる加工方法です。建築材や自動車部品、電子機器の筐体などのいろいろな分野で利用されています。
アルミは鉄と比べて軽量で耐食性に優れていますが、曲げ加工では割れや反発(スプリングバック)など危険性があるためにアルミ材の材質・質別や加工条件に注意が必要になります。
曲げ加工に適した材質と質別
アルミには多くの合金があり、それぞれに異なる特性があります。曲げ加工に適しているのは、加工硬化しにくく延性の高い合金となりますです。
A1050(純アルミ)
純アルミ系は、柔らかくて、延性に優れていますので、曲げ加工や装飾品に向いています。
曲げ加工性は最も適しています。複雑な形状や厳しいRでの曲げ加工に適しています。
A1100(純度99%以上のアルミ)
耐食性と成形性に優れています。板金加工、屋根材などに用いられます。曲げ加工性は適しています。
A2017 (Cu系 ジュラルミン)
銅を主成分とし、非常に高強度ですが、延性が低く、曲げ加工には不向きです。割れやすいリスクが高いです。
A3003(Mn系)
マンガンを添加することで強度を高めた合金ですが、比較的加工性が良好です。一般板金に用いられます。
A5052(Al-Mg系合金)
強度と耐食性が高くて加工性も良好です。船舶、看板、自動車部品などに使われています。曲げ加工性は、やや硬いですが許容範囲になっています。
A6061(Al-Mg-Si系合金)
熱処理によって高強度となることがあるので曲げには注意が必要です。用途としては構造材、建材、機械部品などに使われています。曲げ加工性はあまりよくありませんが、曲げられないことはありませんがT4、T6などの熱処理材は割れやすくなります。
A7075 (Zn-Mg系 超ジュラルミン)
亜鉛とマグネシウムを主成分とし、アルミニウム合金の中で最も高強度ですが、2000番台と同様に延性が低く、曲げ加工には注意が必要です。
質別と(曲げ)加工
質別(テンパー)は「O(焼なまし)」「H(加工硬化)」「T(熱処理)」などに分かれます。
O材(焼なまし材)
最も柔らかくて延性に優れるため、曲げ加工性は最も良好です。複雑な形状や厳しいRでの加工に適しています。
H材(加工硬化材)
冷間加工によって硬度を高めた板で、Hの後ろの数字が大きいほど硬度が高くなります。H12, H14は比較的柔らかく、曲げ加工は可能です。
H18は、最も硬く、曲げ加工には細心の注意が必要です。割れやすいリスクが高まります。
T材(熱処理型合金の調質材)
溶体化処理や時効処理によって強度を向上させた板材です。強度が高い分、O材やH材(比較的柔らかいもの)に比べて曲げ加工性は劣ります。
O材(オー材)は最も柔らかく、曲げに最適ですが、H材(H32など)は硬度が増すと割れやすくなります。T材(T6など)は高強度になりますが、曲げには不向きです。
曲げ加工の方法
アルミ板の曲げには次のような方法があります。
プレスブレーキ曲げ
上部のパンチと下部のダイで板材を挟み込み、圧力を加えることで曲げを行います。金型(パンチとダイ)を使って機械的に板を曲げます。板厚や曲げ半径に応じた金型選定が必要になります。
ロールベンダー曲げ
円筒状や曲面に曲げる時に使います。連続的な曲げ加工に適していて外装パネルなどで使用されます。
ハンドブレーキ(手動ベンダー)
薄板や試作品に用いられる手動工具です。
曲げ半径と板厚
アルミは最小曲げ半径を守らないと割れが生じやすくなります。一般的に「最小曲げ内R ≧ 板厚×1~3倍」が目安となっています。材質やテンパーによって異なります。
曲げ加工の注意点
割れ防止
硬質材(T6材やH材)は、曲げると割れやすくなります。焼なまし(O材)を使うか、事前に局所的な加熱を行う方法もあります。
スプリングバックの補正
アルミは加工後に戻ろうとする力(スプリングバック)が強いので、あらかじめ少し多めに曲げておく必要があります。材質によって補正量が異なります。
曲げ方向の設定
アルミ板には圧延方向がありますので、これに直角に曲げると割れにくくなります。
表面の保護
曲げ加工中に工具と接触すると表面傷が付きやすくなります。
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