2024年度は板・押出出荷、販売数量の回復の兆しはあったのでしょうか・・・
2024年度のアルミニウム圧延品(板)および押出製品の出荷実績が発表されました。
2024年度は、板と押出ともに大きな成長にはならなかったが、個別の分野では需要の底堅さや新規用途での販売展開も見られた。
日本アルミニウム協会がまとめた2024年のアルミニウム圧延品(板・押し出し類の合計)の出荷量は前年比2.0%減の167万2965トンで、3年連続で前年を下回りました。
脱炭素と高機能化への対応とともに、業界が持続可能な競争力のある販売体制への転換点を迎えていると言えます。詳しく説明します。
総出荷量
2024年度(2024年4月~2025年3月)の板・押出製品の総出荷量は、前年同期比で微減傾向となりました。
板製品は航空や電子分野向けの一部需要増があったものの自動車や建材向けが低迷しましたが、押出製品はEVシフトの影響によって一部の用途で回復。建設関連分野での需要が依然として鈍化しており、全体としては横ばいか、やや減少という結果になりました。
板製品
板製品(アルミ圧延材)の出荷量は、前年を約2~3%下回る水準となりました。原因は次のとおりです。
自動車
EV化の流れがすすでいますが、高強度アルミ材の採用はすすんでいるものの、国内生産台数の減少となって出荷量全体は伸び悩んだ。
建築分
住宅着工件数の減少や非住宅建築の停滞で、外装材・屋根材向けが減少した。
電子・半導体
中国や東南アジアからの需要回復に伴って、冷却用ヒートシンクや筐体向けで一定の回復傾向になった。
航空機分野
旅客機製造の再開、増産に伴って厚板需要が堅調に推移した。
押出製品
押出製品(アルミ形材)の出荷は、前年とほぼ同水準で推移しましたが、品種ごとに明暗が分かれた。
建築用サッシ・カーテンウォール
民間設備投資の抑制や資材価格高騰の影響を受けて前年を下回る出荷になった。
輸送
EVの軽量化によって、シャーシ部材やバッテリーボックス向けの採用がすすんで、一部企業では前年超えの出荷があった。
産業機械や設備
ロボットや搬送装置向け部材が堅調だった。海外市場からの引き合いも継続している。

地域別・輸出入の傾向
国内出荷は微減傾向だったが、海外向け輸出は回復基調となっている。米国や東南アジア向けの需要回復が寄与。日本国内での生産コスト高騰が逆風となっているが、製品の高付加価値化により競争力を維持している。
今後の展望と業界課題
脱炭素対応の強化
グリーンアルミ(再生アルミ)への移行やLCA(ライフサイクルアセスメント)対応が顧客選定基準になっている。
設備投資の選別
老朽化ラインの集約と、EV・航空機向け厚板や異形材へのシフトが加速。
需給ギャップの解消
中国を中心とした過剰生産との競合、国内需要の構造変化にどう対応するかが課題となっています。
サプライチェーン
グローバルなサプライチェーンの再構築や、地政学的なリスクの高まりは、アルミ業界にも大きな影響を与えています。原材料価格の変動や、輸送コストの増加、さらには脱炭素化への対応など、多くの課題に直面しています。
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