米国アルミニウム協会について、その役割と世界・日本への影響を解説

地球儀 解説

米国アルミニウム協会はアメリカのアルミ業界団体として、米国市場と貿易政策に強い影響力を持ちますが、日本には日本アルミニウム協会という独自の組織がありますので、日米それぞれの業界が独立して活動しているのが現状であり、世界や日本への影響は間接的な影響はあったとしても限定的と考えられます。

米国アルミニウム協会についてその役割と世界・日本への影響について詳しくまとめました。

米国アルミニウム協会(The Aluminum Association)とは

米国アルミニウム協会は、非営利の業界団体であり、米国のアルミニウム産業を代表する業界団体です。

その役割は多岐にわたり、政策提言、業界データの提供、市場の促進、そして技術標準の策定などを通じて、業界全体の利益と発展に貢献することにあります。

協会の起源は、1930年代に産業界の競争規範整備を目的として設立されたアルミニウム業界団体に遡ることができます。

所在地:アメリカ・バージニア州アーリントン(ワシントンD.C.近郊)

会員構成: アルミニウムの一次生産(精錬、鋳造など)から付加価値加工、リサイクル、部品・素材供給者まで、アルミニウム産業バリューチェーン全体を包含する企業・団体が会員となっています。

会員数:協会には、北米域内で出荷されるアルミおよびアルミ製品のうち、70%が加盟しているとされています。

米国アルミニウム協会(The Aluminum Association)の役割

米国アルミニウム協会は、米国におけるアルミニウム産業の発展を促進するために様々な活動を行っています。

アルミニウム産業の標準化機能も担っています。米国のアルミニウム合金や材料仕様に関する標準(ANSI H35 規格など)を管理・公表する責務を担っており、化学成分、機械的性質、合金命名法などの登録・調整を行っています。

また、リサイクル推進として、協会は、家庭からのアルミ缶回収など資源循環改善の取り組みに関わり、その後独立法人化した「The Recycling Partnership(リサイクリング・パートナーシップ)」の発足に関与しています。

政策提言とロビー活動

スマートエネルギー、貿易、リサイクル、インフラ政策など、米国のアルミニウム業界に利益をもたらすための政策を政府に働きかけます。

また、不公正な貿易慣行に対抗するための措置を講じ、業界を保護します。

貿易ルール・国際交渉

非市場的慣行、補助金、ダンピングなどに対抗するため、米国・日本・EUの三極構成での協調や国際機関への提言などを行っています。

データとリソースの提供

アルミニウム市場のあらゆる分野に関する統計レポートを収集・提供して、業界のビジネスインテリジェンスを支えています。これには、環境、経済、安全に関する報告書も含まれます。

アルミニウムの生産量、出荷量、需要動向などを集計・分析・公表し、会員および政策担当者に情報を提供しています。

技術・標準化

米国内の合金・処理・製品仕様の標準を策定・維持。これにより業界間の共通言語を確立しています。

安全・事故調査

アメリカ国内のアルミ産業の工場・現場などに関する年次報告書を公表して、業界安全向上を目指しています。

市場の促進

自動車や建設など、様々な分野におけるアルミニウムの利点を強調して、その持続可能性やリサイクル性を広めることで、アルミニウムの需要を促進しています。

持続可能性・環境問題への対応

省エネルギー、低炭素化、リサイクル強化など持続可能性戦略を打ち出し、炭素排出削減ロードマップを策定する動きがあります。

業界支援

技術規格や記事の提供、またバイヤーズガイドの出版などを通じて、業界関係者に役立つ情報とリソースを提供しています。

世界への影響

米国アルミニウム協会は、主に米国産業の保護とグローバルな貿易環境への関与を通じて、世界に影響を与えています。

貿易政策への関与

中国などからの不公正なアルミニウム貿易に対抗するため、関税の提言や貿易執行の強化を求めています。これにより、米国の金属供給を確保し、世界のアルミニウム市場の動向に影響を与えます。

グローバルなデータ提供

協会の発行する統計レポートは、世界中の業界関係者やアナリストにとって重要なビジネスインテリジェンス源となっています。

日本への影響

米国アルミニウム協会は米国中心の組織であるため、日本への直接的な影響は限定的です。

日本のアルミニウム産業は、独自の業界団体である一般社団法人日本アルミニウム協会(JAA)が中心的な役割を担っていますので、間接的な影響であれば、限定的にあると考えられますが、基本的には独立した動きとなっています。

ただし、日本の企業や団体は、米国協会が示す低炭素化ロードマップ、リサイクル強化方針、国際標準化動向などを参照することがあるので、こうした米国側の政策方向性が世界の潮流となれば、日本側も追随せざるを得ない場面が出てくる可能性があります。

グローバルな貿易政策

米国アルミニウム協会が提唱する貿易保護政策(関税など)は、世界のアルミニウム市場の価格や供給に影響を与えるため、日本のアルミニウム輸入業者や関連企業にも間接的に影響を及ぼす可能性があります。

米国アルミニウム協会は、特に中国など国家主導型の補助金政策・国営企業支援体制がアルミ産業に与える影響を強く批判しており、これが世界的な過剰生産・価格抑制・競争ゆがみをもたらすと主張しています。

OECD、IMF、WTO など国際機関による補助金・貿易歪み報告を歓迎しており、これを根拠に政策主張を強める姿勢を見せています。

また、米国・EU・日本のアルミ協会が三極連携し、補助金ルール強化や均衡ある競争環境を求める声明を発表してきました。

技術・規格

米国アルミニウム協会が策定する一部の技術基準や規格は、国際的に参照されることがあり、日本の関連業界がこれを考慮に入れる場合があります。

アルミニウム合金・製品仕様について、米国内で定められた標準(ANSI H35 規格など)は米国業界内で広く用いられており、これらが他国・他地域の規格整合の基盤になるケースもあります。

また、米国協会は日本、欧州、カナダなどの同業団体と情報共有・協力を行うケースがあり、三極でのWTO交渉や補助金ルール改善など政策的な連携が図られています。

Q&A

まとめを兼ねてQ&Aをつくりました。参考にしてください。

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