空気アルミニウム電池(Al-air batteries)とは、空気中の酸素をアルミニウムで反応させて、電力をつくる次世代電池です。アルミニウム空気電池とも呼ばれています。
空気アルミニウム電池とは
空気アルミニウム電池(Al-Air電池)は、アルミニウムと、空気中にある酸素を使って電気をつくる、使い捨てタイプの電池です。この電池は一度で使い切るタイプの電池です。
アルミニウム空気電池は軽くてたくさんのエネルギーを生み出せます。リチウムイオン電池と比べると、同じ重さで何十倍ものエネルギーを持つ可能性があります。
アルミニウム空気電池は、電池の中で最もエネルギー密度が高い電池で実用化されている亜鉛空気電池より高体積エネルギー密度の電池です。
アルミニウムは地球にたくさんあり、リサイクルもしやすい金属です。環境にも優しく、資源の面からも期待されています。
災害が起きた時の非常用電源や、長期間保存しておきたい用途、例えば軍事目的などで注目されています。

アルミニウム空気電池の仕組み
空気アルミニウム電池は、主として次の3つの要素でできています。
1.負極(マイナス)のアルミニウム
2.正極(プラス)の空気中にある酸素
3.電解質として水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ性の水溶液
電池が電気をつくる場合にアルミニウムと水溶液が反応して、電気の元になる電子が出てきます。
同時に、空気中の酸素と水が反応して、その電子を受け取る準備をします。この一連の化学反応によって、電気が発生するという仕組みです。
アルミニウム空気電池の特徴
アルミニウム空気電池の特徴は、電気をつくるために必要な酸素を、電池の外にある空気から取り込むことです。
そのために、電池自体の重さを大幅に軽くできることにあります。また、理論的には、リチウムイオン電池の数十倍ものエネルギーを生み出すことも可能だと言われています。
アルミニウム空気電池の実用化の状況
空気アルミニウム電池は主として次のような分野で実用化がすすんでいます。
・防災用の非常電源として、長い間保管できて、災害時に安定して電気を供給できます。
・軍事用途として、軽くてエネルギーが高くて長期間保管できます。
・ドローンや水中ロボットとして、今までよりもずっと長い時間動かすことができます。
ただし、現在のところ、空気アルミニウム電池は充電ができないので、電気自動車や家電製品などの繰り返し使用するものにはあまり使われていません。
また、値段、コストや寿命、起動時間、副産物の除去などの問題であまり広く使われておらず、主として軍事用に限られてしまっています。
アルミニウム空気電池の値段
アルミニウム空気電池は、まだ大量生産されていないので、少し値段は高くなります。例えば、防災用の電池ユニットだと、1kWhあたり数万円以上することもあります。
しかし、これから技術が進歩してたくさん生産されるようになれば、もっと安くなることが期待されています。
アルミニウム空気電池のメリットとデメリット
メリット
・パワフルで、ほかの電池よりも長い時間使えること
・軽くて持ち運びが必要なものに適していること
・長持ちするので数年間保管しても性能が落ちにくいこと
・安全性が高くて燃えたり爆発したりする心配が少ないこと
・使った後のアルミニウムはリサイクルできるので環境に優しいこと
デメリット
・使い切りで充電できないこと
・電池の中の水分が重要なので、密封したり、湿度を調整したりする必要があること
・電気を作る過程で、アルミ水酸化物という物質が出てきて、性能が落ちたり、詰まったりすることがあること
・量産する技術がまだ確立されていないため、値段が高いこと
これからの空気アルミニウム電池と課題
空気アルミニウム電池がもっと普及するには、いくつかの課題をクリアする必要があります。
技術的な課題
充電できるようにすることが必要です。現状は使い捨てなので、繰り返し使えるようにしなければなりません。
ゴミの処理方法の開発しなければなりません。電気を作る時に出てくる物質をうまく取り除く技術が必要です。
酸素との反応をもっとスムーズにするための材料を見つけることも必要になってきます。
費用・コストの課題
量産してコストを下げることが必要になります。サプライチェーン、部品の供給ルートを確立する必要もあります。安全に使うための法制度などルールをつくることも必要です。
空気アルミニウム電池の今後
持ち運びできる非常用電源や、災害時の備え、小型のドローンや水中を探査するロボットなどのいろいろな用途で活躍することが期待されています。
リチウムイオン電池のように、あらゆるものに使われるというよりは、特定の目的のために作られた、高性能な使い捨て電池として市場に出るかもしれません。
より効率の良い電極の材料や、リサイクルの技術がすすめば、もっと広い範囲で使われるようになるかもしれません。
持ち運び可能な非常電源や、災害時のバックアップ用途、さらには小型ドローンや水中探査機器など、用途は確実に広がっています。リチウムイオン電池の代替としての位置づけではなく、「特定のニーズに特化した高性能一次電池」としての成長が見込まれています。
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