建設現場で発生するアルミスクラップの水平リサイクルについて

解説

大林組は、2025年12月18日プレスリリースにて「建設現場で発生するアルミスクラップの水平リサイクルフローを構築し、新築建物でアルミサッシとして再生利用が実現」を発表しました。
https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20251218_1.html

この記事について解説します。

水平リサイクルについて

水平リサイクルとは、使用済みの製品を原料として、同じ種類の新しい製品に再生するリサイクル方法です。同じ種類というのがポイントです。ですから、アルミ缶であれば、アルミ缶からアルミ缶、ペットボトルからペットボトルということになります。

元の製品と同等の品質を維持して、資源を循環させることができるので、アルミの原料であるボーキサイトから圧延するよりもCO2排出量を大幅に削減できますので、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現として注目されています。

建設現場におけるアルミスクラップの水平リサイクルとは

記事の主旨

この記事のポイントは、「建設現場から出るアルミ廃材を、再び同じ建設資材(サッシ等)に再生する」という水平リサイクル(Closed-loop Recycling)の仕組みを、ゼネコン・商社・メーカーの3社が協力して構築したことにあります。

役割分担としては、大林組が解体・建設現場でのスクラップ回収の管理と実証を行って、伊藤忠メタルズがスクラップの効率的な回収網の構築と物流管理を行います。
そして、不二サッシが回収したスクラップを原料として受け入れて、高品質な再生アルミを製造します。

ポイントとしては、従来のアルミサッシを溶かして自動車部品にするといった用途変更ではなく、「サッシからサッシへ」という循環を実現した点に、技術的・仕組み的な先進性があります。

背景

アルミニウムと環境

アルミニウムは軽量、耐食性に優れる、何度溶かしても品質劣化が少ないという特性を持ち、リサイクル適性が高い金属と言えます。

アルミに限らず金属は一般的に、プラスチックや紙と異なり、リサイクル(溶解・再凝固)しても化学的性質が変化せず、元の品質をほぼそのまま維持できるという優れた特徴があります。

特に重要なのがCO2排出量であり、新地金(ボーキサイト由来)に比べて、リサイクルアルミは、エネルギー消費が約3~5%とされており、CO2排出量が大幅に削減できます。

建設業界におけるアルミ

建設分野では、アルミサッシ、アルミカーテンウォール、アルミ手すり・ルーバーや内装建材など、アルミ押出材やアルミ板が大量に使用されていますが、、解体や改修時に発生するアルミは、異物(樹脂・ゴム・ビス)混入、材質系統において6000系や5000系などの識別困難という理由から、高品質な再利用が難しいとされてきましたが、今回の大林組の取り組みで解決されます。アルミサッシは、ほぼすべて材質が6063の押出材です。

A6063は、マグネシウムとシリコンを主要添加元素とする6000番台アルミニウム合金で、押出し方式で複雑形状を成形できます。耐食性や表面処理性にも優れており、アルミサッシなど建築用押出形材に最も多く使用される「構造用アルミニウムの汎用材」として、建築から工業製品まで幅広い分野で採用されています。

脱炭素・ESG・建設業の責任

ゼネコン各社は現在、Scope3排出量の削減やサプライチェーン全体での環境配慮を強く求められています。「資材をどう調達するか」だけでなく、「廃材をどう循環させるか」が企業評価となります。

ゼネコンのScope3削減は、資材製造(Scope3 Cat.1)と建設物の使用時(Scope3 Cat.11)が主な対象で、低炭素型・リサイクル建材の開発・導入(クリーンクリート、電炉鉄骨、木造化)、ZEB/ZEH化の推進、サプライヤーとの協働、建物の省エネ設計などが主要な戦略となっています。自社努力だけでなく、バリューチェーン全体での取り組みが不可欠で、大林組や鹿島建設などが具体的な開発・導入事例を公開しています。

今後(水平リサイクルがもたらす変化)

建設現場起点の資源循環モデルの確立

今回の取り組みでは、大林組が建設現場・分別管理を担当して、不二サッシがアルミ建材メーカーとして再生材の受け皿となり伊藤忠メタルズが流通やスクラップ管理をするという役割分担が明確になっています。これは単なるスクラップ回収ではなく、「建設 → 回収 → 再生 → 再び建設」という循環を設計段階から組み込むモデルへの第一歩となります。

再生アルミの「品質保証」という価値

水平リサイクルが成立する最大のポイントは、合金系の材質、成分管理、不純物管理を行い点にありますが、今回はサッシなので、この管理が比較的簡単にできると思われ、JIS等の建材基準を満たす再生材を安定供給できる点にあります。

これによって、再生材は品質が劣るという従来の認識が覆されて、再生アルミは高付加価値材という評価が定着する可能性があります。

建設業界全体への波及効果

このモデルが広がれば、ゼネコン間でのリサイクルスキーム標準化、設計段階から「解体後の再利用」を考慮したり、建材メーカーの材料調達構造の変化など、建設業界の資材調達思想そのものが変わる可能性があります。

問題点

現場での分別のコストと人手不足

課題は、建設現場での分別です。工期優先、作業員不足、分別ルールの徹底が難しいなどの現実の中で、「高品質なスクラップ」を安定的に回収するには、分別マニュアル、教育、インセンティブが不可欠となります。

経済合理性の確保

水平リサイクルは、選別・物流・品質管理にコストがかかるため、アルミ地金相場が下落した局面では採算が合わないリスクがあります。今後は、環境価値(CO2削減量)の可視化やグリーン調達要件への組み込みなど、価格以外の評価をどう組み込むかが重要となります。

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