全固体アルミニウム空気電池はEVやドローンのゲームチェンジャーになるかもしれません。リチウムを超える!?全固体アルミニウム空気電池とは?仕組み・特徴・将来性をわかりやすく解説します。
全固体アルミニウム空気電池とは
全固体アルミニウム空気電池(All-Solid-State Aluminum-Air Battery)とは、アルミニウムを負極(マイナス極)に、空気中の酸素を正極(プラス極)の反応物として利用し、電気を生み出す二次電池のひとつです。
従来のアルミニウム空気電池は電解液に水溶液を使っていましたが、全固体タイプは液体ではなく固体電解質にするのが特徴です。
漏液や乾燥のリスクがなくて安全性と耐久性がよくなります。
従来のアルミニウム空気電池
アルミニウムと空気中の酸素を反応させて電気エネルギーを取り出します。アルミを負極、空気中の酸素を正極として、電解液中で化学反応を起こすことで電力を発生させます。
基本的な仕組み
全固体アルミニウム空気電池は次の反応で動きます。
放電時
負極(アルミニウム)が酸化し、電子を放出します。空気中から取り込まれた酸素が正極で還元反応を起こして、電子を受け取り、固体電解質を通じてイオンが移動することで、外部回路に電流が流れます。
充電時(二次電池タイプ)
外部から電力を加えてアルミを再び金属の状態に戻します。空気中の酸素は再び分離され、大気へ戻ります。
従来の水溶液電解質ではアルミニウム空気電池の充電が難しかったのですが、固体電解質を使うことで二次電池としての利用が可能になります。

特徴とメリット
高いエネルギー密度
アルミは軽くて反応性が高いので、リチウムイオン電池の数倍の理論エネルギー密度となります。同じ重さで長時間の利用ができるようになります。
安全性が高い
可燃性の有機電解液を使わないので、発火や爆発のリスクが低くなります。漏液しないために防水や耐衝撃設計がしやすくなります。
低コスト・環境負荷の低さ
アルミニウムは埋蔵量が多く豊富なうえに、リサイクルも盛んにおこなわれている金属です。希少金属ではないので、資源価格の変動を受けることが少ないです。
長期の保存
固体電解質により自己放電が抑えられるので長期間保管しても性能が落ちにくくなります。
課題
充電効率
充電時の電極反応を効率化する技術が必要になる。
固体電解質の性能改善
イオン伝導度を高め、低温でも安定動作する材料開発が必要。
製造コスト
量産技術が確立するまではリチウムイオン電池より値段が高い。
活用が期待される分野
電気自動車(EV)
長距離航続が可能になり、充電回数を減らすことができます。
ドローン・ロボット
軽量化して長時間運用ができます。
災害用・非常用電源
長期保存ができるので保管しても劣化がすくない。
今注目されている理由
高いエネルギー密度
アルミと酸素の組み合わせで理論上では、非常に高いエネルギー密度を持つことになります。同じ重さであれば、より多くの電気を蓄えられることが可能です。
電気自動車の航続距離を大幅に延ばすことも可能ですし、スマホの充電頻度を減らしたりできます。
安全性
電解質に燃えやすい液体ではなく固体なので液漏れや発火のリスクが非常に低くなり、安全性が高くなります。
低コストで豊富に存在
負極に使うアルミは、リチウムに比べて地球上に豊富にあるので価格が安いです。電池の製造コストを抑えることができて普及しやすいと考えられています。
価格は市場の状況によって変動しますが、炭酸リチウムの価格は、1トンあたり数百万円になることがありますが、アルミニウムの価格は、1トンあたり数十万円程度です。
単純に比較すると、リチウムはアルミニウムの10倍以上の価格になることがあります。
将来性と市場動向
世界的に次世代電池の研究がすすんでおり、日本・中国・米国・欧州でも全固体アルミニウム空気電池の試作・実証実験がすすんでいます。
リチウムイオン電池の代替や補完として、EVや再エネ蓄電の分野で本格的に実用化される可能性があります。
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