アルミ板の小売りの最低数量ですが、圧延メーカーが直接、顧客やユーザーに少量小ロットなど小口販売で1枚から販売することはありません。
理由は圧延メーカーでは、定尺などの寸法のアルミの平板を1枚だけつくることができないためです。
その理由の詳細をアルミ板の圧延工程でご説明します。
スラブ(圧延用鋳塊)
スラブ(圧延用鋳塊)は、大きな直方体の形状につくられた圧延用のアルミの鋳塊です。
これを加熱して、高温度で板状に大きなロールをあてて圧延します。
このスラブは、あらかじめ成分を調整して半連続鋳造法でつくられています。
重量はアルミ板の製作の目的や工場の圧延設備の仕様などによって決められますが、アルミ板1枚のためにスラブ(圧延用鋳塊)をつくることはできません。
スラブ(圧延用鋳塊)は、厚さ200~600mm程度で、最低でも2トン、約2~28トンの重量となります。
従って、最低2トン分のアルミ板が販売の最小数量、最小ロットということになります。

圧延加工
アルミ圧延は、展伸加工法で行われます。板材は圧延によって製造されます。
圧延は平行におかれた一対のロールを回転させて、ロールとロールの間に直方体のスラブ(圧延用鋳塊)を通して薄くする加工方法です。
このスラブは進行方向に長く延びて薄くなって、販売用途や販売目的などの所定の厚さにして出てきます。
この圧延でスラブの鋳造組織を破壊して、均質で優れた性質に変えていきます。
この工程でも最低2トンの量で工程が行われることになります。
熱間圧延と冷間圧延
圧延加工は、スラブを加熱して加工する熱間圧延とコイルを室温で加工する冷間圧延2つに分類されます。
熱間圧延はアルミニウムの再結晶温度以上で行い、約400℃以上の高温度で行って材料を薄く伸ばすことができて、スラブの鋳造組織を厚板の圧延組織にかえます。
冷間圧延は室温で行い、熱間圧延の後工程として薄板の仕上げとして行われます。
この2種類の圧延工程で厚いスラブから薄い板へと加工されます。この工程でも最低2トンの量で工程が行われることになります。
この後、製造された薄板は、セールス目的や仕様の必要に応じて、焼なましや安定化処理を行います。
焼なまし
金属の内部に発生した残留応力や加工硬化を取り除いて結晶組織を均一にして柔らかさを向上させる熱処理です。
焼鈍(しょうどん)やアニーリングとも言われます。
安定化処理
アルミ部品が発売後の使用で温度上昇して、性質が変化するのを防ぐために使用時の温度より少し高い温度で部品の性状を安定化させる熱処理です。
仕上げと出荷
最後に、切断して検査梱包、目的のコイルにして圧延メーカーから出荷位します。
切断工場・切断会社
圧延メーカーから出荷されたコイルは、圧延メーカーの系列の切断工場や圧延メーカーとは独立した小口や小ロットなど少量のセールスを目的としてアルミをカットする工場に納品されて、定尺のアルミ板に加工されます。
ここで、1枚のアルミ板ができるわけですが、「熱間圧延と冷間圧延」や「焼なまし」の工程で2トン単位でアルミ板の強度などに仕様に基づいて製作されています。最低でも2トン分の同仕様のアルミ板ができてしまいます。ここに1枚だけ販売して納品するむずかしさがあります。
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