アルミリサイクルの画期的方法が開発されています。捨てるアルミ缶やアルミホイルから水素エネルギーを取り出して利用したり、販売しようという試みです。
アルミニウムを水素にする方法
アルミで水素を生成する技術は、アルミと水との化学反応を利用します。
アルミは酸化被膜で覆われていますので直接に水と反応しませんが、酸化被膜を除去するか、特定の条件下でアルミを反応させると水素が生成されます。
アルミと水は、適切な条件下で反応して水素を生成します。この反応は化学式で表すと次のようになります。
2Al + 6H2O → 2Al(OH)3 + 3H2
この反応は常温でもわずかにできますが、反応速度を上げるためには、次の方法を使います。
ナノ構造化アルミニウム
アルミニウムをナノレベルの微細な構造にすることで、表面積が増加して、水との反応が促進されます。
カーボンナノチューブとアルミニウムの複合材などが研究されています。
アルカリ性溶液
水酸化ナトリウムなどのアルカリ性溶液中でアルミニウムと水を反応させることで、効率的に水素を生成できます。
アルミを水酸化ナトリウム(NaOH)などのアルカリ溶液に投入すると、酸化被膜が除去され、水素が発生します。
この方法は、アルミ付き紙パックなどのリサイクルにも応用されています。
液体金属との合金化
ガリウムやインジウムとの合金化です。
アルミにガリウムやインジウムなどの液体金属を添加することで、アルミニウムの表面を活性化させて、水との反応を促進する研究もあります。
アルミをこれらの金属と混ぜることで酸化被膜が形成されにくくなって常温の水とも反応が可能となります。
微粒子化
アルミニウムを微細な粉末に加工して水との反応を促進する方法もあります。微粒子化されたアルミニウムは、水と反応する際に亀裂に沿って水分子が侵入して、水素が発生するとされています。
たとえば、高温条件でアルミニウムを水蒸気と反応させると、水素を生成することができます。

アルミの廃材から水素をつくることは可能か?
アルミの廃材から水素を作ることは可能です。アルカリ性溶液を使用する方法では、アルミ廃材のリサイクルに適しています。
家庭や業者から回収されたアルミ付き紙パックやアルミ缶などの廃材を分別して処理をして、アルミを取り出して水素製造に利用するシステムが開発されています。
アルミの廃材を利用する場合の問題点
アルミ廃材を利用する場合に問題点もあります。
酸化被膜の除去
アルミ廃材の表面に酸化被膜があるため、水素生成の反応効率が低下します。アルミの酸化被膜とは、アルミニウムの表面に形成される酸化アルミニウムの皮膜です。大気中の酸素と結合して自然に生成される自然酸化皮膜と、電解液中で人工的に生成される陽極酸化皮膜があります。
廃材の分別と処理
アルミ廃材には他の素材と複合している場合もありますので、効率的な分別と処理が必要になります。
不純物
アルミの廃材に含まれる不純物が水素生成反応に影響を与える可能性がありますので、高純度の水素をつくるには、不純物を除去することが必要です。
また、多くのアルミの廃材が合金であるため、望まない副生成物が発生するリスクがあります。廃材を効率的に利用するには、アルミ純度や成分ごとに分別する必要がありますが、これには時間とコストがかかります。
このように廃材の回収や処理、水素生成装置の導入と維持には多くの費用がかかります。また、反応後に残るスラグや副産物の処理も環境負荷の観点から問題となる可能性があります。

アルミリサイクルで水素生成の今後と課題
アルミリサイクルによる水素生成は、再生可能エネルギーの有効活用、廃棄物削減、水素社会の実現に貢献する可能性があります。
より効率的でコストの安い水素生成技術の開発が必要です。廃材に含まれる不純物の影響を低減する技術や、いろいろ廃材に対応できる技術開発が必要になります。
実用化に向けた実証実験やインフラ整備も必要になります。地域社会や企業との連携を通じて、持続可能なリサイクルシステムの構築が重要となります。
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