最新のデータと情報を基に、アルミニウムの海外(小売りや小口を除く、主として企業向けの)販売と関税について、日本のアルミニウム輸出状況、世界の生産・消費動向、そして関税について解説します。
経済産業省のデータによると、日本のアルミニウム輸出額は近年増加傾向にあります。主な輸出先は、中国、韓国、台湾などのアジア地域です。
輸出されているアルミニウム製品は、板、押出形材、箔などがあげられます。これらの製品は、自動車、建材、電気製品など、様々な産業分野で使用されています。
アルミニウムについて
アルミニウムの海外販売と関税について解説する前に、アルミの品種と材質別の販売用途などについて解説しておきます。
アルミの品種
アルミ板
アルミ板は、薄板状に圧延された製品です。様々な厚さやサイズがあり、建築材料、自動車部品、電気製品などに使用されます。
アルミ押出形材
アルミの押出形材は、アルミニウム合金を高温で金型(ダイス)に(ところてん方式で)通して(押し出して)成形された製品です。複雑な形状の製品を製造することができ、建材、輸送機器、家具などに使用されます。
アルミ箔
アルミ箔は、非常に薄い板状に圧延された製品です。包装材料、電気製品、医療用具などに使用されます。
アルミの材質
純アルミ
純アルミは、アルミニウム含有量が99%以上の製品です。加工性や耐食性に優れており、電気製品、化学製品、包装材料などに使用されます。
アルミ合金
アルミ合金は、アルミニウムに他の元素を添加した製品です。添加する元素の種類や量によって、強度、耐食性、加工性などの特性を調整することができます。航空機、自動車、建材などに使用されます。
代表的な添加元素は次のとおりです。
銅(Cu):強度を向上させる効果があります。ジュラルミンや超ジュラルミンなどです。航空機や輸送機などに使用。
マンガン(Mn): 強度や耐食性を向上させる効果。缶や建材などに使用。
ケイ素(Si): 鋳造性を向上させます。ダイカスト製品や自動車部品などに使用。
マグネシウム(Mg): 強度を向上させる効果。5000系合金など。自動車部品や船舶など。
亜鉛(Zn): 強度の向上。7000系合金など。航空機やスポーツ用品などに使用。

アルミニウムの日本の輸出状況
日本のアルミニウム輸出は、品種別および国別に多様な傾向を示しています。最新の詳細な統計データは財務省の貿易統計から取得可能です
以下に、主な品種である板、押出、箔について解説します。
アルミ板
主に自動車や建築分野で使用されており、高い強度と加工性が求められます。輸出先としては、アジア諸国や北米が中心であり、特に中国や韓国、アメリカへの輸出が多い傾向があります。
アルミ押出
建築用のフレームや産業機械部品として利用されており、精密な寸法と多様な断面形状が特徴です。
東南アジア諸国や欧州への輸出が多くなっており、特にタイやインドネシア、ドイツなどが主要な輸出先となっています。
アルミ箔
食品包装や電子機器の部品として需要が高く、薄さと均一性が重要になります。アジア地域、特に中国や台湾、また北米のアメリカへの輸出が多くなっています。
これらの輸出動向は、各国の産業需要や経済状況、為替レートの変動などに大きく影響を受けます。最新のデータを参照し、適切な輸出戦略を策定することが重要になります。
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アルミニウムの世界別販売量
世界のアルミニウム市場は、地域ごとの生産量と消費量に大きな差異があります。
中国
世界最大のアルミニウム生産国であり、2021年の生産量は約3,890万トンと報告されています。
同時に、国内需要も盛んで、建設や自動車産業の発展にともなって、消費量も世界トップクラスとなっています。
インド
生産量で世界第2位を占めており、2021年には約396.7万トンを生産しています。
国内のインフラ整備や工業化の進展によってアルミの需要が増加しています。
ロシア
豊富な天然資源を背景にして、アルミの主要生産国の一つとなっています。生産量の多くは輸出されており、特に欧州やアジア市場への供給が多くを占めています。
日本
インゴットやスラブなどの圧延前のアルミ生産は限定的であり、多くを輸入に依存しています。圧延技術などの高度な加工技術を活かして付加価値の高いアルミ製品を製造・輸出しています。
世界全体のアルミニウム生産量は、2024年に前年比3.3%増の7,038万8千トンと報告されています。
今後も新興国の経済成長や環境対応車の普及などによってアルミの需要は増加傾向が続くと予想されます。
アルミニウムと関税の関係
アルミニウム製品の国際取引において、関税は重要な要素となります。各国の関税率や貿易政策は、輸出入コストや競争力に直接影響を及ぼします。
日本からの輸出時の関税
日本は多くの国・地域と自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)を締結しており、これらの協定に基づいてアルミニウム製品の関税が削減または撤廃されている場合があります。
具体的な関税率は、輸出先の国・地域および製品の分類(HSコード)によって異なります。最新の関税情報は、財務省や経済産業省の公式サイトで確認してください。
輸出先国ごとの関税制度
各国の関税政策はさまざまであり、特に米国では、国家安全保障上の理由からアルミニウム製品に対して追加関税を課す措置が取られています。
例えば、米国は通商拡大法第232条に基づき、現時点では、一部のアルミニウム製品に対して10%の追加関税を適用しています。
また、欧州連合(EU)や中国なども独自の関税制度や貿易措置を講じており、輸入規制や反ダンピング関税が適用される場合があります。
欧州連合(EU)
EUは、特定の国からのアルミニウム製品に対して反ダンピング関税を適用することがあります。
例えば、中国製のアルミ押出材に対しては、2021年に反ダンピング関税が課されました。
また、EUは環境政策の一環として「炭素国境調整メカニズム(CBAM)」を導入しており、二酸化炭素排出量の多い製品に追加コストを課す方針を取っていますので、日本からEUにアルミ製品を輸出する場合、カーボンフットプリントの管理が求められる可能性があります。
中国
中国はアルミニウムの世界最大の生産国ですが、国内市場を保護するために輸出関税を設定することがあります。
特に、未加工のアルミ地金に対しては輸出関税を課し、高付加価値のアルミ製品の輸出を奨励する政策を取っています。
また、中国政府はアルミニウム産業の過剰生産を抑制するための措置を講じることがあり、今後の輸出動向にも影響を与える可能性があります。
このように、アルミニウムの国際取引では各国の関税政策や貿易規制が重要な要素となるため、最新の動向を把握しながら適切な輸出戦略を立てることが不可欠です。
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