寒くなると、アルミサッシまわりに「水滴がびっしょり」「枠だけ先に濡れる」といった結露トラブルが発生しやすくなります。これから問い合わせが増えてきます。アルミサッシに水滴ができて、カビが生えて不衛生だとか、水滴がフローリングや畳にまで落ちで、床を傷めてしまうなどが多いのでアルミの結露について記事を作成しました。
結露は熱伝導が大きいとか表面処理の違いなどのアルミの性質と、室内の温湿度や窓まわりの構造が重なって起きる現象です。
アルミの結露とは何か、結露が起きる条件、アルマイト(陽極酸化)や塗装が結露にどう影響するか、すぐにできる対策や長期的な改修案まで詳しく解説します。
アルミの結露とは
アルミの結露は空気中に含まれる水蒸気が、アルミ表面の温度がその空気の露点温度より低くなることで水滴の液体になって付着する現象です。
アルミは金属なので熱伝導率が高く、外気に近い温度に冷やされやすいため、ガラスや周囲の建材と比べても早く表面温度が下がって結露しやすくなります。
見た目だけでなく、カビの発生、塗膜の劣化、金属部の腐食などの被害を招くことがあります。
結露が発生する条件
結露は表面温度が露点温度より低いと起きます。
室内の温度と相対湿度(RH)
湿度が高いほど露点温度は高くなり、表面がそれほど冷えなくても結露します。冬季は暖かく湿った室内空気と冷たい外気の差で結露が起きやすくなります。
冬は室内相対湿度を40~60%未満(できれば40~50%)に保つのが目安です。
表面材質と熱伝導
アルミは熱を伝えやすいために屋外側の影響を受けやすく、枠やサッシの内側が冷たくなって結露しやすくなります。
構造的な熱橋(サーマルブリッジ)
アルミフレームが断熱層を貫通していると、そこから冷気が伝わり局所的に低温になって結露が集中してしまいます。
外気条件
外が非常に寒くて窓まわりの放射冷却が大きいと結露が出やすくなります。沿岸地域や霧、雨で塩分や汚れが表面にあると腐食リスクも上がります。
換気・換気経路
換気不足や、室内の風呂、料理や洗濯物などの水蒸気発生源と窓が近い場合に結露が発生しやすくなります。
1日に数回、数分間窓を開けて室内の空気を入れ替えることで、湿った空気を排出し、結露を防ぎます。
キッチンや浴室の換気扇をこまめに使用し、湿気を外に逃がします。除湿機を使用したり、部屋干しを避けたりすることで、室内の湿度を下げます。
アルマイト処理(陽極酸化)と結露
アルマイト(陽極酸化)はアルミ表面に酸化皮膜(酸化アルミニウム)を人工的に生成する処理で、耐食性・耐摩耗性・着色性を高めます。
ただし、アルマイト処理は、アルミニウムの耐食性や耐摩耗性を向上させるための表面処理ですが、結露防止効果はほとんどありません。アルマイト処理はアルミニウムの表面に酸化皮膜を形成するものであり、この皮膜自体は断熱性を持ちません。
熱的影響は小さい
アルマイト層は薄膜(数μm~数10μm)なので、熱伝導全体に与える影響は限定的です。アルマイト処理しているから結露しないとか、しやすいといった決定的な差は熱面では大きくありません。
耐食性は向上する
アルマイト処理は凝縮した水による化学的な腐食リスクを下げます。沿岸や工場地帯のように汚染・塩分がある環境では、無処理アルミよりアルマイトのほうが耐久性が高くなります。
メンテナンス
アルマイト面に汚れや有機物が残ると、結露水が保持されて局所劣化の原因になるため、定期的な清掃と適切な中性洗剤での洗浄が有効です。
塗装と結露
液体塗装、粉体塗装などの塗装はアルミの外観保護と耐候性向上に有効ですが、結露との関係では次の点に注意します。
遮断層としての効果
塗装は物理的なバリアをつくるので、アルミ素地が直接露にさらされるのを防ぎ、長期的な腐食防止に寄与します。
ただし塗膜は薄いため「熱的に表面温度を大きく上げる」ほどの断熱効果は期待できません。根本的な結露対策は断熱・換気・窓構成の改善が中心になります。
塗膜の種類と耐久性
屋外に露出するサッシには粉体塗装(パウダーコーティング)やフッ素系塗料など、耐候性の高い塗装が推奨されます。塗膜が劣化・ひび割れすると、そこから水が侵入して局所的な問題を起こします。
表面の濡れ方(親水/疎水)
塗料の種類によって親水性か疎水性かが異なり、結露の見え方や水滴の落ち方が変わります。防曇(親水化)コーティングや撥水コーティングを意図的に使うことも可能です。
下地処理
塗装の密着性を高める前処理(脱脂・化学処理・プライマー)は、防錆性と長寿命に直結します。結露で常時湿潤になる場所では下地処理を疎かにしないことが重要です。
結露対策
すぐできる対策
室内湿度を下げる
換気扇(浴室・キッチン)を使う、こまめな換気(短時間でも効果あり)、衣類の室内干しを避けるまたは除湿機を使用します。
拭き取りと乾燥
結露が出たらこまめに拭き取り、カビや塗膜損傷を防ぎます。
暖房
窓まわりに暖かい空気が流れるように床下暖房を利用、カーテンはガラスに密着させない(空気の循環を妨げない)こと。
窓まわりの気密・水抜き孔確認
サッシの排水孔(ドレン)が詰まっていないか、パッキンが劣化していないか点検します。
窓周りの断熱シートや内窓(インナーサッシ、二重窓)
断熱シートは窓ガラスやアルミサッシに貼ることで、表面の温度低下を緩やかにし、結露を軽減します。
既存サッシに後付けできる内窓は費用対効果が高い。サッシの隙間シールやゴムパッキン交換で局所冷気侵入を減らすこともできます。既存の窓の内側にもう一つ窓を設置することで、窓と窓の間に空気層ができ、高い断熱効果が得られます。
改修や交換
サーマルブレーク(断熱材入りアルミ)へ交換
アルミフレーム内に樹脂ブレーク(熱橋を断つ構造)を持つ製品に替えると、枠の内側温度が大きく改善し結露が劇的に減少します。
断熱サッシへの交換
アルミニウムと樹脂を組み合わせた複合サッシや、樹脂製の樹脂サッシは、アルミニウム単体のサッシに比べて熱伝導率が低いため、結露が大幅に改善されます。
Q&A
まとめを兼ねてQ&Aをつくりました。参考にしてください。
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