アルミニウムとアルカリについてアルミの変色反応と注意点

解説

アルミニウムは身の回りにたくさんある金属で、軽さ、加工性、錆びに強いことから、いろいろな製品に使われていますが、特定の条件下では予期せぬ反応をすることがあります。それは、アルカリ性物質との反応です。

アルミニウムとアルカリについて、その化学的な基礎から、日常生活における注意点まで詳しく解説します。

アルミニウムについて

アルミニウム(Al)は、地殻中に多くある軽金属で、銀白色の光沢と優れた加工性を持ちます。

比重は約2.7と軽く、鉄や銅の約3分の1の重さですが、強度があるために、航空機、自動車、建材、日用品など幅広く使われています。

アルミニウムは空気中で酸素と反応して、薄い酸化皮膜を自然に形成します。この皮膜は数ナノメートルの厚さですが、内部の金属を保護する皮膜になり、酸化や腐食を防ぐという特徴があります。

ただし、この酸化皮膜は酸やアルカリには弱く、特に強アルカリ性の環境では溶解してしまいます。

アルカリとは、酸・塩基とは

「酸」「塩基(アルカリ)」について理解しておく必要があります。化学では、「酸」と「塩基」は物質の性質を分類する概念です。

酸(Acid)

水に溶けると水素イオンを放出する物質を指します。水溶液は酸性を示して、pHが7未満です。酸性の水溶液は、一般的に酸っぱい味を示し、金属を腐食させる性質を持つものが多いです。たとえば、塩酸、硫酸、酢酸などです。

塩基(Base)

水に溶けると水酸化物イオンを放出する物質、あるいは水素イオンを受け取る物質を指します。水溶液は塩基性(アルカリ性)を示し、pHが7より大きいです。塩基性の水溶液は、一般的に苦い味を示し、ヌルヌルとした感触を持つものが多いです。たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどです。

アルカリ(Alkali)

塩基の中でも、水に溶けて強い塩基性を示すものを特にアルカリと呼びます。水に溶けて水酸化物イオンを多量に放出する、水溶性の強い塩基性物質を指すことが一般的です。

pH(ペーハー)は、水溶液の酸性・中性・アルカリ性の度合いを示す指標で、0から14までの数値で表されます。pH7が中性であり、pHが7より小さければ酸性、7より大きければアルカリ性(塩基性)となります。

アルミ鍋

身の回りのアルカリ性のもの

身の回りのものには、様々なアルカリ性のものがあります。アルミ製品を安全に扱う上で非常に重要なことです。

石鹸、洗剤類

手洗い石鹸、食器用洗剤、洗濯用洗剤、住居用洗剤など、多くの洗浄剤は汚れを落とすためにアルカリ性を示します。特に油汚れに強い洗剤は、強アルカリ性である傾向があります。

重曹(炭酸水素ナトリウム)

弱アルカリ性ですが、掃除やアク抜きなど、幅広く利用されています。

セスキ炭酸ソーダ

重曹よりもアルカリ性が強く、油汚れや皮脂汚れに効果的です。

アンモニア

窓ガラスクリーナーやトイレ用洗剤の一部に含まれることがあります。

漂白剤

衣類用漂白剤(酸素系、塩素系)の中にはアルカリ性のものがあります。特に塩素系漂白剤は強いアルカリ性を示します。

コンクリート、モルタル

建築材料として使用されるこれらは、水と反応して水酸化カルシウムを生成するため、強いアルカリ性を示します。

温泉水

温泉の中には、pH値が高いアルカリ性の泉質を持つものがあります。

これらの物質とアルミニウム製品を接触させる場合は注意が必要です。

アルミニウムの反応

アルミニウムは通常は表面の酸化皮膜によって保護されていますが、この酸化皮膜は酸やアルカリに対しては安定性が低くて、特定の条件下で溶解してしまいます。

アルカリ性物質とアルミニウムが接触すると、以下のような反応が起こります。

酸化皮膜の溶解

アルミニウムの表面を保護している緻密な酸化皮膜は、強アルカリ性の溶液中で、反応により溶解します。反応によっては、アルミニウム素地が露出します。

アルミニウム素地の溶解と水素ガスの発生

酸化皮膜が溶解して素地が露出すると、露出したアルミニウムは水酸化物イオンと反応し、溶解が進みます。この時、水素ガスが発生します。

この反応が進むと、アルミニウム製品の表面は光沢を失い、白っぽく変色したり、黒ずんだり、腐食して穴が開いたりする現象が見られます。これがアルミの変色反応となります。

見た目の変色だけでなく、アルミ自体が溶解しているため、製品の強度低下や機能不全を引き起こす可能性があります。密閉された空間でアルカリとアルミニウムが反応して、水素ガスが発生すると、圧力上昇による容器の破損や、最悪の場合、引火・爆発の危険性も考えられます。

アルミニウムとアルカリの注意点

アルミニウム製品を安全に使うには、アルカリ性物質との接触を避けることが大切です。

アルカリ性洗剤の使用を避ける

食器用洗剤、洗濯用洗剤、住居用洗剤、漂白剤など、アルカリ性の強い洗剤をアルミニウム製の鍋、やかん、調理器具、シンクなどに使用するのは避けてください。

アルミホイルやアルミ製の食器を洗う場合も、中性洗剤を使用し、長時間の浸け置きは避けてください。
食洗機用洗剤は一般的にアルカリ性のものが多く、アルミ製品を食洗機に入れると変色や腐食の原因になります。

重曹、セスキ炭酸ソーダの直接接触を避ける

重曹やセスキ炭酸ソーダは掃除に便利ですが、アルミニウム製品への直接使用は避けましょう。

重曹ペーストをアルミニウム製品に塗布したまま放置すると、変色や腐食を引き起こします。

酸性・アルカリ性の強い食品との接触に注意

梅干し、トマト、レモンなどの酸性の強い食品、あるいはこんにゃくなどのアルカリ性の強い食品をアルミニウム製の容器に長時間入れたままにすると、反応が起こりやすくなります。

コンクリートやモルタルとの直接接触に注意

アルミニウム製の建材や部品をコンクリートやモルタルと直接接触させると、アルカリ反応により腐食が進む可能性があります。

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