アルミニウムは軽量で耐食性に優れており、建築・自動車・航空機・機械部品など幅広い分野で使用されていますが、アルミの溶接は「難しい」と言われる代表的な材料でもあります。
アルミの溶接方法(TIG・MIG・レーザー・スポット)から、アルミ溶接棒の種類や選び方、アーク溶接との関係まで詳しく解説します。
アルミ溶接の基礎知識
アルミニウムは鉄と比較して、融点は約660℃と低くて、熱伝導率が非常に高く、表面に強固な酸化皮膜を形成する、線膨張係数が大きいなどという特徴があり、これらの特性が、アルミ溶接を難しくしている主な原因となっています。
アルミ溶接の注意点
アルミ溶接はなぜむずかしいのでしょうか?アルミ溶接が難しい理由は主に以下の通りです。
酸化皮膜の存在
アルミ表面には酸化皮膜があり、これを除去しなければ溶接できません。表面を覆う酸化皮膜は融点が約2,000℃と非常に高く(アルミ本体は約660℃)、これが溶け残ると融合不良の原因になります。
熱伝導率が高い
アルミは伝導率が高く熱が周囲へ逃げやすく、母材がなかなか溶けないため、高出力が必要になります。熱が逃げやすいため、溶接開始時に十分な入熱が必要ですが、一度温度が上がると一気に溶け落ちる(バックドロップ)リスクがあります。
ひずみ・割れが発生しやすい
アルミは線膨張係数が大きく、溶接後の収縮で変形や割れが起きやすいです。
ブローホール(気孔)
アルミは水素を吸収しやすく、気孔欠陥が発生しやすいため、適切な溶接方法と溶接棒の選定が重要になります。水素ガスを吸込みやすいため、溶接部の中に気泡(ブローホール)ができやすく、強度の低下を招きます。
アルミの溶接の方法
- アルミの溶接には主に次の方法があります。
- TIG溶接
- MIG溶接
- レーザー溶接
- 抵抗スポット溶接
- アーク溶接(被覆アーク)
用途や板厚、生産量によって使い分けられています。
TIG溶接(アルゴン溶接)
タングステン不活性ガス溶接です。アルミ溶接で最も一般的かつ高品質な手法です。
- TIG溶接(アルゴン溶接)の特徴は次のとおりです。
- タングステン電極を使用
- アルゴンガスでシールド
- 高品質で美しいビード
非消耗式のタングステン電極を使用。交流電流の「クリーニング作用」により、酸化皮膜を除去しながら溶接できます。精密な作業が可能で、外観が非常に美しく仕上がります。
- TIG溶接(アルゴン溶接)のメリットは次のとおりです。
- 薄板に最適
- 精密作業に向く
- 仕上がりが良い
- TIG溶接(アルゴン溶接)のデメリットは次のとおりです。
- 作業速度が遅い
- 熟練技術が必要
アルミ溶接では交流(AC)TIG溶接が一般的です。交流により酸化皮膜を除去(クリーニング作用)できます。
MIG溶接
溶接ワイヤを電極として送り込みながら行う半自動溶接です。
- MIG溶接の特徴は次のとおりです。
- ワイヤを自動送給
- 半自動溶接
TIGよりも溶接スピードが速く、長尺ものや厚板に適しています。
- MIG溶接のメリットは次のとおりです。
- 作業効率が高い
- 中厚板に適する
- 量産向き
効率性が高く、大量生産に向いています。
- MIG溶接のデメリットは次のとおりです。
- スパッタが出やすい
- 薄板は難しい
一般的な工場でのアルミ構造物製作ではMIG溶接が主流です。
レーザー溶接
高エネルギーのレーザービームを照射して溶接します。
- レーザー溶接の特徴は次のとおりです。
- 高エネルギー密度
- 熱影響部が小さい
- レーザー溶接のメリットは次のとおりです。
- ひずみが少ない
- 高速加工
- 自動化しやすい
入熱範囲が極めて狭いため、熱歪みを最小限に抑えられます。自動車や精密部品分野で採用が増えています。超精密溶接や、薄板の溶接に威力を発揮します。
抵抗スポット溶接
2枚の板を電極で挟み、加圧しながら電流を流して接合します。
- 抵抗スポット溶接の特徴は次のとおりです。
- 電極で挟み電流を流す
- 主に薄板接合
アルミは電気抵抗が低いため、鉄よりも大きな電流と高い加圧力が必要です。
- 抵抗スポット溶接のメリットは次のとおりです。
- 高速
- 量産向き
アルミは電気伝導率が高いため、大電流が必要になります。自動車のボディパネルなど、重ね継手の量産に適しています。
アルミ溶接棒について
アルミ溶接では、母材に適合した溶接棒(フィラー材)を選定することが重要です。
溶接棒はTIG溶接用フィラーロッド・MIG溶接用ワイヤ・被覆アーク溶接棒のような用途で使われます。
母材の成分や強度、耐食性に合わせて選びます。
アルミ溶接棒の材質
代表的なアルミ溶接棒の材質は以下の通りです。
- 4043系(Al-Si系)
- 流動性が良い
- 割れにくい
- 汎用性が高い
鋳物や6000系合金によく使用されます。
- 5356系(Al-Mg系)
- 強度が高い
- 耐食性が良い
- 海洋環境向き
構造材によく使用されます。
- 1100系(純アルミ)
- 延性が高い
- 電気用途向き
母材との適合を確認せずに使用すると、割れや腐食の原因になります。
アルミ溶接棒の選定
溶接棒選定ではまず、母材の合金系を確認します。1000系、5000系、6000系など母材の種類に合わせます。
強度要求があるのか?引張強度が必要かどうかを見極めます。
耐食性は必要か、海水環境かどうかなどが選定ポイントになります。後処理(アルマイト・塗装)をするのかどうかも重要です。外観重視なら4043系が有利な場合があります。
原則としては母材と近い成分、または割れにくい成分を選ぶことが重要です。陽極酸化処理(アルマイト)を施す場合、色が合わないと溶接部だけ目立ちます。
6000系などの割れやすい母材には、シリコン含有量の多い4000系の溶接棒を選ぶのが定石です。
アルミ溶接棒とアーク溶接
アルミの被覆アーク溶接は可能ですが、現在ではあまり一般的ではありません。
理由は操作が難しいこと、品質が安定しにくいこと、TIG・MIGの方が高品質なことがあります。現在の主流はTIGまたはMIG溶接です。
アルミ溶接を成功させるためのポイント
- アルミ溶接を成功させるためのポイントは次のとおりです。
- 母材の脱脂・清掃を徹底する
- 酸化皮膜をワイヤブラシで除去
- 適切なシールドガスを使用
- 適正な溶接棒を選定
- 予熱が必要な場合もある



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