アルミの比熱について鉄や銅との比較、材質別も詳しく解説

アルミ板 解説

アルミニウムは、軽量性、加工性、リサイクル性、そして優れた熱伝導性から不可欠な素材となっています。アルミの熱特性、比熱について、他の金属と比較しながら詳しく解説します。

アルミニウムについて

アルミニウム(Al)は、ボーキサイトを原料として精錬され、圧延されて加工される軽金属です。

地球の地殻中に酸素、ケイ素に次いで3番目に多く存在する元素であり、金属の中では豊富に存在しています。

その特徴としては、まず、軽量性です。密度は約2.7g/cm3と、鉄の約1/3と非常に軽量です。

高い熱伝導性もあります。熱を伝えやすい性質があって放熱部品や調理器具などに多く用いられています。

電気伝導性も銅に次いで電気伝導性を持ち、送電線などにも利用されています。

耐食性としては、表面に自然に酸化皮膜を形成するために優れた耐食性があります。

また、加工性のよさもアルミの特徴です。展性や延性がよく、いろいろな形状に加工しやすい特性を持っています。

最後に、最近注目されているリサイクル性がよい点があげられます。融点が低く、少ないエネルギーで再溶解できるため、リサイクル性に優れています。

アルミの比熱

比熱とは

ある物質1kgの温度を1℃上昇させるのに必要な熱量のことです。単位は通常、ジュール毎キログラム毎ケルビン(J/(kg・K))またはカロリー毎グラム毎℃(cal/(g・℃))で表されます。

アルミの比熱

アルミニウムの比熱は、純アルミニウムの場合、約900 J/(kg・K)です。

この比熱の値は、アルミが熱をどの程度蓄えやすいかを示しています。比熱が大きい物質ほど、温まりにくく冷めにくい性質があります。

アルミニウムは、この比熱特性と高い熱伝導性を併せ持つため、熱を均一に伝えたり、熱を素早く放散したりする用途に適しています。例えば、エンジンの部品やヒートシンク、調理器具などで、この特性が活かされています。

鉄との比較

アルミニウムの比熱が約900 J/(kg・K)に対して、鉄の比熱は約450 J/(kg・K)です。

アルミニウムの比熱は鉄の約2倍です。同じ量のアルミニウムと鉄を1℃温めるために、アルミの方が約2倍の熱量が必要であることを意味します。

この比熱の違いは、それぞれの金属の利用に影響を与えます。鉄は比熱が小さいためにフライパンなどでは比較的早く温まりますが、冷めるのも早いです。

アルミは比熱が大きいために温まるのに時間がかかりますが、一度温まるとその熱を保持しやすい傾向がありますが、アルミは熱伝導率も高いために、実際には熱を素早く伝え、放散する用途で強みを発揮します。

銅との比較

アルミの比熱、約900 J/(kg・K)にたいして、銅の比熱は約390 J/(kg・K)です。銅の方がアルミニウムよりも温まりやすく、冷めやすいことを示しています。

銅は高い熱伝導率を持つために、ヒートシンクや熱交換器など、熱を素早く移動させたい場合に優れた性能を発揮します。

アルミニウムも高い熱伝導率を持っていますが、銅に比べるとその値はやや劣りますが、アルミは軽量です。熱伝導性と軽量性のバランスが必要な用途で選ばれることが多くなっています。自動車のラジエーターや航空機の部品など、軽量化が必要な場合にアルミが選ばれています。

アルミの材質別の比熱

アルミ合金は、純アルミニウムに他に銅、マグネシウム、マンガン、ケイ素などを添加して、強度や耐食性、加工性などの特性を向上させています。これらの合金化元素の添加により、比熱もわずかに変わります。

アルミニウム合金の比熱は、純アルミニウムの比熱である約900 J/(kg・K)に近い値を示しますが、添加される元素の種類や量によって多少の増減はありますが、劇的に変化することはありません。

代表的なアルミニウム合金の比熱は以下のようになります。数値は参考値であり、厳密な値は合金の種類や処理によって異なります。

A1050(純アルミニウムに近い合金)約900 J/(kg・K)
A5052(マグネシウム系合金)約890 J/(kg・K)
A6061(マグネシウム・ケイ素系合金)約896 J/(kg・K)
A7075(亜鉛・マグネシウム系合金)約860 J/(kg・K)

添加材によって比熱が大きく変わることは少ないので、一般的な用途であれば純アルミニウムの比熱を参考にしても問題ないと思いますが、厳密な熱計算が必要な設計においては、使用するアルミ合金の正確な物性値を参照する必要があります。

コメント