Aluminium Stewardship Initiative (ASI)について問い合わせがありましたので、あまり知られていないようですので詳しく調べてみました。
参照先(英語/中国語)
https://aluminium-stewardship.org/
名称
Aluminium Stewardship Initiative (ASI) アルミニウム・スチュワードシップ・イニシアティブ
- 日本語では、文脈に応じて、次のように説明的に表現される場合もあります。
- 「アルミニウム責任管理イニシアチブ」
- 「アルミニウム持続可能性推進イニシアチブ」
- 「アルミニウム責任ある調達・利用の国際認証制度」
概要
アルミニウム・スチュワードシップ・イニシアティブ(ASI)は、アルミニウムのサプライチェーン全体にわたって、責任ある生産、調達、および管理を推進することを目的とした組織です。
非営利の標準設定・認証機関(スタンダード/認証制度運営組織)になります。2015年に法人化されて、ISEAL(持続可能性スタンダードを扱う国際機構)のコードに適合する組織として認められています。
目的
ビジョンはアルミニウムを持続可能な社会に最大限貢献できる資源とすることで、ミッションとして、アルミニウムの「責任ある生産」「調達」「管理(ステワードシップ)」を支援・促進することとあります。
アルミニウム産業における温室効果ガス(GHG)排出量を2050年までに現在の20分の1以下に削減することを目指すなど、アルミニウムのバリューチェーン全体で責任ある生産を推進することとなっています。

戦略
戦略の基盤となる4つの柱(Strategic Foundations)は次のとおりです。
1.効果的ガバナンス(multi-stakeholder意思決定、組織の持続性強化)
2.強固なプログラム運営(技術基盤、認証・保証制度の実行)
3.変化を促す取組(データ・透明性、ステークホルダー動員)
4.認証を越えて(Capacity Building、地域・先住民族との関係強化など)
また、ASI が特に注力するサステナビリティ優先課題として、次の4項目を掲げています。
1.気候変動(Climate Change)
2.循環性(Circularity / 資源効率、リサイクル)
3.人権(Human Rights)
4.自然回復(Nature Positive / 生物多様性・生態系保全)
組織
本部は、オーストラリアのメルボルンにあります。
6つのメンバークラスで構成されるマルチステークホルダー組織。理事会、標準委員会、作業部会、先住民族諮問フォーラム、事務局から成り立っています。
メンバー制度
ASI はマルチステークホルダー型の組織で、アルミニウムの供給側企業、使用者(ダウンストリーム企業)、市民社会組織、支援団体など幅広い組織に会員参加を呼びかけています。
会員は複数のクラス(Production & Transformation、Industrial Users、Downstream、Supporters、Associations 等)に分類され、規模に応じた年会費を支払うことになります。
会員には、標準策定プロセスや審議会、委員会、ワーキンググループ等への参加が可能な場合もあります。
標準委員会(Standards Committee)
標準・ガイダンスの改訂、認証制度・監査制度の設計、影響評価などに関する意思決定を行う機関です。
事務局(Secretariat)
日常運営、統括、標準改訂、認証制度運営、監査機関とのやり取り、データ管理、対外対応などを担います。
活動
ASIは、以下のような活動を通じて、アルミニウムの責任ある調達を推進しています。
認証プログラム
パフォーマンス・スタンダードとCoC(Chain of Custody)スタンダードを含む認証プログラムを提供しています。
なお、認証の標準類は、世界中で適用可能であり、段階的な改定プロセスを通じて更新されています。
ASI Performance Standard(性能基準)
社会的・環境的・ガバナンス観点を含む幅広い持続可能性要件を規定。ガバナンス、事業透明性、廃棄物管理、水資源、生物多様性、温室効果ガス排出、人権・労働安全などを含みます。
ASI Chain of Custody Standard(原材料追跡/調達基準:CoC 基準)
製品中のアルミニウムがどのような供給チェーンを通って来たかを確実に追跡や管理する仕組みを定めています。サプライチェーン上の記録、文書管理、請求・表示(claims)などを含みます。
ASI Assurance Manual(保証手続マニュアル)
第三者による監査・保証を運用する際の原則・手順を定めたもの。認証の信頼性確保を目的とする。
ASI Claims Guide
ASI 認証や会員に関して、どのような「主張(claims)」を公表できるか、その条件・制限を明記するガイドです。
サステナビリティの推進
気候変動、サーキュラリティ(循環性)、人権、そして自然へのポジティブな影響といった持続可能性の優先事項に取り組んでいます。
教育および研究
「educationAL」や「elementAL」といったオンライン学習プラットフォームや、進捗ダッシュボード、材料フロー図などを通じて、データや研究に関する知見を提供しています。
また、2027年初頭に新しい規格をリリースする予定で、現在その改訂を進めています。
ASI認証取得の流れ
1.自己評価(Self Assessment)
認証を希望する企業が、自社の活動・施設・製品などの「認証範囲」を定義。
ASIの基準に照らして、内部で自己評価を実施。
2.認証監査(Certification Audit)
ASI認定の第三者監査機関(例:TUV RheinlandやDQSなど)が現地監査を実施。
リスクベースで適合性を評価。
3.監査報告(Audit Report)
監査人が報告書を作成し、ASI事務局と企業に提出。
不適合があれば、是正措置計画を策定・実行。
4.認証発行(Certification Issuance)
ASI事務局が報告書の透明性と完全性を確認。
問題がなければ、認証書を発行し、ASI公式サイトに掲載。
5.定期的な再調査(Surveillance & Re-certification)
認証期間中(通常3年)にサーベイランス監査を実施。
期間終了時には再認証監査を行い、継続的な適合性を確認。
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