アルミの建値とは?地金相場を製品価格に反映させるルール

地球儀 解説

アルミニウムの圧延品や加工品の価格が決まる「建値」について詳しく解説します。

アルミニウム製品の価格はどうしてきまるの?

地金相場(国際相場)

アルミニウム製品の主な原料であるアルミニウム地金の国際市場価格は、製品価格に直接、大きな影響を与えます。また、地金相場にはロンドン金属取引所(LME)などの相場が指標となります。

LME(London Metal Exchange)は、1877年に設立された取引所で、世界最大規模の非鉄金属専門の先物取引所です。銅、鉛、スズ、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、アルミ合金などが上場されています。取引方法は、LMEの会場で行われるリング取引と、立会場外で行われるカーブ取引や電子取引があります。

加工費

地金から特定の形状や特性を持つ製品に加工するための費用です。溶解、鋳造、圧延、押出、表面処理、切削などの工程にかかるコストが含まれています。製品の種類や加工の複雑さによって大きく変動します。

輸送費・物流費

原料の調達から製品の配送までにかかる費用です。

その他諸経費

人件費、設備投資費、研究開発費、一般管理費などが含まれます。

需給バランス

特定の製品に対する需要と供給のバランスも価格に影響を与えます。需要が供給を上回れば価格は上昇し、逆であれば下落する傾向にあります。

アルミの建値とは

アルミの建値(たてね)とは、アルミ地金の国際相場変動をアルミ製品の価格に反映させるための価格であり決定のルールのことです。

一定期間の地金価格の変動を平均して製品の販売価格に上乗せするか、調整する仕組みのことでもあります。

アルミニウム地金は日々その価格が変動していますが、製品価格をその都度、毎日、変更するのは、非常に煩雑なので、この建値という仕組みを使っています。

建値は、月単位や四半期単位で設定されることが多く、その算定方法や適用方法はアルミ業界の慣行や個別の取引契約によって異なります。

NSP(New Standard Price)とは

NSP(New Standard Price)は、アルミ地金の価格変動を製品価格に反映させるための建値制度です。

NSPは、日本国内のアルミ地金の基準価格として、主要なアルミニウムメーカーによって決定されますが、LMEのアルミニウム地金価格に加えて、為替レート(円/ドル)、輸入コスト(関税、港湾料、国内輸送費など)を総合的に勘案して算出されます。

NSPは、国内のアルミニウム製品取引における地金部分の価格指標を提供することで、メーカーとユーザーは共通の基準に基づいて価格交渉を行うことができるので、市場の透明性が維持されます。NSPは、毎月見直されて、その月の取引に適用されることが多いです。

最近の地金相場

アルミの地金相場は、国際的な経済情勢、エネルギー価格、主要生産国(中国など)の生産動向、米ドルの為替レートなど、様々な要因によって常に変動しています。

アルミ精錬では大量の電力を消費するので、原油価格や天然ガス価格の上昇は生産コストを押し上げ、地金相場にも影響を与えます。

コロナ禍以降の物流の停滞やコンテナ不足などが、地金の供給に影響を与えて、価格を押し上げる要因となることがあります。

世界最大のアルミ生産国である中国の政策や同国の経済状況は、国際相場に大きな影響を与えます。

特定地域での紛争や政治的緊張なども、資源供給の不安定化となり、価格変動の要因となることがあります。

圧延品や加工品の価格はこうして決まる

アルミニウムの圧延品(板、コイルなど)や押出品(棒、管、形材など)、加工品(自動車部品、建材、電子機器部品など)の価格は、これらを複合的に考慮して決定されます。

製品価格 = (地金価格部分) + (加工費) + (その他経費・利益)

地金価格部分に、建値(NSPなど)が適用されます。例えば、NSPがキログラムあたりいくらとなれば、その月の取引においては、製品の重量に応じてこの地金価格が反映されます。

  1. 地金価格の算定

LME相場、為替レート、輸入コストなどに基づき、NSPなどの建値が設定されます。

  1. 加工費の見積もり

製品の形状、寸法、合金の種類、表面処理、加工難易度などに基づいて、メーカーが加工費を算出します。この加工費には、設備償却費、人件費、電力費などが含まれます。

  1. その他経費の上乗せします。輸送費、販売管理費、研究開発費などが加算されます。
  2. 適正な利益が上乗せされます。

延品や押出品は汎用品であり、建値の適用が明確ですが、加工製品の場合や、少量生産の製品では、加工費の比重が大きくなります。圧延品であっても少量・小ロットの場合も地金以上のプレミアムが付く場合もあります。

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