「もう日本ではアルミの原料はつくられてないのでは?」ということをよく聞きます。
たしかにアルミインゴットは日本では輸入がメインですが、日本ではリサイクルが普及しており、リサイクル産業も多く、実はアルミ缶からもインゴットがつくられています。価格はLME相場と為替で変動することになりますが、インゴットは100%輸入ではありません。
アルミのインゴットは、精錬されたアルミニウムを鋳型に流し込んで固めた塊です。アルミニウムの半製品で、主に再溶解して圧延、押出、鋳造などの加工を行うための原料として使われます。サイズや形状はさまざまですが、一般的には重量が数キロから数トンに及ぶものまであります。
アルミのインゴットとは
アルミニウムのインゴット(Aluminum Ingot)とは、アルミニウムを精錬・鋳造して固めた「塊(かたまり)」のことです。
棒や直方体の形で流通しており、アルミの素材を圧延、押出、鋳造などの工程で加工するための原料となります。
圧延では、板材、アルミホイルの元の材料となる板、押出では、形材、棒、パイプ、鋳造では鋳物をつくる原料・材料となります。
世界的には、中国、ロシア、中東諸国などで大規模に生産されており、日本を含む多くの国ではこれを輸入して圧延などの二次製品に加工しています。

アルミのインゴットの用途
アルミインゴットは、次のような幅広い用途に使われています。
自動車部品では軽量化による燃費向上を目指してホイール、エンジンブロック、ボディパネルなどに使われます。
建材では軽くて丈夫な特性を生かし、サッシ、カーテンウォール、屋根材などに利用されます。
飲料食品関係では錆びにくく、リサイクルしやすいことから、アルミ缶や包装材に広く使われています。
板や箔などの圧延材
ビールなどの飲料缶、食品容器、サッシや外壁としての建材、自動車、電車や航空機などに使われています。
形材、棒、パイプなどの押出材
建築用サッシ、配管、自動車部品などで使われています。
鋳物(ダイカスト)
自動車のエンジン部品、自動車のホイール、電気機器の筐体などに使われています
線材
電線用として、送電線、通信ケーブルなどに使われています。
圧延メーカーは輸入?
日本の圧延メーカーは、基本的に原料となる一次アルミインゴットを海外から輸入しています。日本国内ではボーキサイト(アルミ原鉱石)がほとんど採れないために原料段階からの一貫生産はできず、海外で精錬されたアルミを輸入し、圧延・加工して製品化する流れが一般的です。かつては精錬も日本で行っていた時期がありますが、電力料金で競争力がなくなり、日本での精練は撤退した経緯があります。精錬には莫大な電気が必要になるので電気の安い国が有利になります。
国内で製造してるところは?
日本にはかつてアルミナからアルミを取り出す工程のアルミ精錬がありましたが、電力コストの高さから1990年代以降に撤退しています。
現在は、リサイクルアルミを溶かしてインゴットにする二次合金メーカーが国内に多数あり、自動車部品用ダイカストなどに供給しています。
たとえば、大紀アルミニウム工業所、三井アルミニウム、エス・エム・アルミニウムなどで海外精錬品の新地金とリサイクル材を組み合わせて製造しています。
アルミ缶からインゴットはできる?
アルミ缶からインゴットをつくることは可能です。アルミ缶は高純度アルミでできており、リサイクル効率が非常に高い素材です。
日本では「アルミ缶 to インゴット to 缶」というリサイクルループが確立されており、回収した缶を溶解してインゴット化し、それを再び圧延して新しい缶材にしています。アルミ缶のリサイクル率は90%以上と世界的にも高い水準です。
「アルミニウム缶 to 缶リサイクル」は、持続可能な社会の実現に貢献しています。回収されたアルミ缶は、選別、洗浄、圧縮され、溶解炉で溶かされて、不純物を取り除き、新しいインゴットとして鋳造されます。このリサイクルは、天然資源の消費を抑えて、製造過程で排出される温室効果ガスの削減にもつながっています。
個人でもつくれる?
技術的には個人でも「小規模な溶解炉」でアルミスクラップを溶かし、型に流し込めば「アルミの塊」を作ることはできますが、気を付けなければならないのは、アルミの溶解温度です。約660℃以上になります。これだけの高温にする必要があります。また、仮に溶かすことができても、均一な純度や組成にするのは極めて難しいです。産業用途に使える品質のインゴットを個人でつくるのは現実的ではありません。
つくったら値段はいくら?
仮にアルミインゴットをつくったとしたら、価値は「重量 × 地金価格」となります。
1kgのインゴットなら、地金相場が1kgあたり300円なら約300円となります。
ただし、リサイクル品で不純物が多いと、相場よりも大幅に安くなります。
どうやって価格は決まるの?
アルミインゴットの価格は、主に次の要因で決まります。
LME相場(ロンドン金属取引所)**
世界の基準価格。日々の国際相場がまずベースになります。
プレミアム(地域加算)
日本では「日本プレミアム」と呼ばれる追加料金があり、輸送費や在庫コストが反映されます。
為替レート
アルミはドル建て取引のため、円安時には価格が上昇します。
需給関係
自動車・建築・缶需要などが旺盛であれば価格が上がり、不況や需要減少で下がります。
Q&A
まとめを兼ねてQ&Aをつくりました。
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