アルミから水素をつくる

解説

「アルミから水素」この技術が確立されて実用化されれば、家庭ごみや産業廃棄物が、未来のクリーンエネルギーへと変わるかもしれません。コストや副生成物の処理など、課題もありますが、エネルギー革命になるかもしれません。詳しく解説します。

アルミニウムについて

アルミニウムは地球の地殻の中にたくさんありますし、軽量で強度もあり、腐食にも強いという特性を持っています。

飲料缶、サッシ、鉄道車体や航空機の部品、建設資材などで使われています。

リサイクル率も非常に高くて、約90%以上リサイクルされており、リサイクルの優等生です。再生アルミは製造時のエネルギー消費が新品の約3%と、環境負荷の低い素材として環境にやさしい金属として高く評価されています。

水素の利用について

水素は、脱炭素社会を目指すクリーンエネルギーの有力なひとつです。

水素燃料電池を搭載した自動車(FCV)や水素を直接燃焼させるタービン、製鉄業の「水素還元製鉄」など、活用がどんどん拡大しています。

政府は「水素基本戦略」を策定して、水素の製造・輸送・利用にかかるインフラ整備をすすめています。福島県浪江町には世界最大級の水素製造プラント「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」が稼働しています。

アルミニウムから水素を取り出す方法

アルミニウムは水と反応して水素を発生させますが、反応しにくいために、表面の酸化皮膜を取り除くことが必要になります。

  • 酸化被膜を取り除く方法は次の方法があります。
    • アルミ粉末+水酸化ナトリウム水溶液の方法で室温で水素を発生させる方法
    • 削ったアルミ+常温水の方法、酸化皮膜は薄いので薬品なしで短時間で反応可能
    • ガリウムなどとの合金化、常温の純水でも反応されて移動式の発電装置などに利用

産総研の携帯型水素発生装置

国立研究開発法人 産業技術総合研究所では、アルミ粉末と水を反応させて発電用水素を取り出す携帯装置を開発しています。災害時の非常用電源として利用を想定、飲料缶などのアルミスクラップを燃料源とする実証も実施。

水素を取り出す費用

アルミニウムから水素を取り出すコストは、現在、一般的な水素製造(天然ガス改質、水電解)に比べると高くなります。

概算で、1Nm3あたり百円近くかかるとされており、天然ガス改質法(約10円前後)より割高となってしまいます。

ただし、次の手法であれば、コストを低減することも可能だとされています。

廃アルミを有効利用する方法

処分費がかかるが、アルミの廃材を利用することで、実質的な原料コストをゼロにできる。

現場発生型の小規模での利用

輸送コストや貯蔵の問題がある水素を、使用場所でその場で発生させることでコストを少なくさせることができる。

京都大学発スタートアップ「Hydrogenium」

アルミと薬剤を混合した「固体型水素カートリッジ」を開発して、非常用電源やドローン、携帯発電機向けに実用化をすすめています。数kgの装置で数時間分の水素供給が可能で、メンテナンスのいらない小型水素源となる。

アルミニウム

普及する可能性と今後について

アルミニウムを使った水素発生技術は、次のような分野での普及が見込まれています。

災害時のエネルギー供給

停電時でも簡単に水素を取り出せる仕組みとして、自治体や防災分野での導入。

離島・山岳地域での自立型電源

水素供給がむずかしい場所での分散型エネルギー源として活用。

宇宙・軍事用途

電力網のない環境でも、長期間エネルギーを供給可能な手段として利用する。

NASAのアルミ水素発生実験

NASAは、宇宙ミッションでの緊急エネルギー供給方法として、アルミと水の反応による水素生成装置の研究をしています。水があればどこでも反応を起こせるので、月面や火星探査でも利用できるとされています。

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