アルミニウム押し出し形材は、基本的には購入者であるユーザーが設計した断面の形状を書いた図面に基づいて製作します。言わば、オーダーメイドが基本ですが、管(パイプ)、角パイプや棒(丸棒・角棒)、形材でもチャンネルやアングルといった汎用品は、需要家の図面ではなく、あらかじめ在庫して販売する商品としてJIS規格にそって製作する場合もあります。
製作方法を決めるのは、コスト、仕様(寸法精度・強度・表面程度など)、製作数量、納期に基づいて選定します。
もちろん一番大きな要因になるのは、形材の形状です。外接円は、押出能力から決まってしまいますが、その範囲であれば、自由に設計できますが、製作可能な形状によって肉厚などが異なってきます。
アルミ押出形材の製作範囲を判断する場合、原則、外接円で判断します。外接円とは多角形のすべての頂点が同一の円周上にある円です。外接円の直径で判断します。
ただし、製作範囲は、アルミ板と違って、アルミ押出は多様な製造方法があるので、次の方法によって、製作範囲が違ってきます。
ソリッド形材の場合
ソリッド形材とは、つなぎ目のない一枚物の材料のことを指します。英語の「solid」には「固体の」「中が密に詰まった」「中が空洞でない」という意味があって、中身が空洞になっていない押出形材のことです。
アルミのソリッド形材で一般的な6063合金の場合であれば、一般的に外接円直径の上限は外径300mm程度です。
最小肉厚は合金によって異なります。合金の柔らかさなどによって異なってきます。
形材の用途による違い
一般的に最小肉厚は断面形状によって異なり、用途による装飾用であるかどうかなどの表面程度の要求によって変わってくるために、個別の用途や強度などについて検討する必要があります。

材質の強度による違い
一般的なアルミの強度は、次のような順序になります。
純アルミ(1000系合金)<Al-Mn系(3000系合金)<Al-Mg系(5000系合金)<Al-Mg-Si系(6000系合金)<Al-Cu系(2000系合金)<Al-Zn-Mg系(7000系合金)
純アルミが一番やわらかくて、Al-Zn-Mg系の7000系合金が一番固くなります。
具体的な合金番号としては次のとおりとなります。
・Al-Mn系 3003、3004
・Al-Mg系 5052、5083
・Al-Mg-Si系 6063、6061、6005C
・Al-Cu系 2014、2017、2024
・Al-Zn-Mg系 7003、7204、7075、7050
溶接をする構造物は5083材、強度の必要な場合は7000系を使います。
押出の形状や材質によって製作可能な肉厚が変わってきます。
合金の押出性は一般的には、強度の高い合金ほど押出性が悪くて、厚さを大きくする必要がありますし、寸法許容差も大きくする必要があります。
熱処理を必要とするT4、T6質別などの場合は、焼き入れひずみによる形状の変化を考慮にいれなければなりません。製作範囲や仕様も変わってきます。
T4は、焼き入れのまま常温で自然時効処理された状態です。T6は、最もよく行われる熱処理で、硬さがより確実になります。
T4:溶体化処理後に冷間加工を行わず、自然時効させる
T6:溶体化処理後に冷間加工を行わず、人工時効硬化処理をする
押出方法による違い
アルミニウムの熱間押出に用いられている押出方式には、直接押出、間接押出、中空押出があります。この方式の違いによっても製作範囲は違ってきます。
この3つの方式は、それぞれ、最終製品の用途、強度、(寸法)精度などのユーザーが必要とする仕様によって、との方式をとるか判断します。
直接押出
直接押出は、壁で囲まれたコンテナの中にビレットというアルミの塊を入れてステムで圧力をかけて、ダイスと呼ばれる金型に開いた孔と同じ形状の押出材を取り出す一般的な押出の方法です。
コンテナ内のビレットが押されてダイスのところまで行くのにコンテナの壁との間に摩擦が発生するので、押す力に大きな力が必要になります。
間接押出
間接押出は、コンテナとビレットがいっしょに動いてダイステムで固定され静止しているダイス金型に開いた孔と同じ形状の押出材を取り出す方法です。
ビレットはコンテナといっしょに動くので摩擦が少なくなります。ビレット表面に不純物などがあると、押出材の欠陥となるためにビレット表面の皮を剥いたり、はがしたり洗浄などの工程が必要になります。
精度の高い寸法で製作することができますので、寸法に余裕をもってつくる必要がなくなります。
中空押出
中空押出は、材料の内部に空間をつくって押出をする方法です。
オス型とメス型の金型を組みあわせる「ポートホール」と、材料に棒状の部品を突き刺してつくる「マンドレル」があります。
中空押出ではガラスを潤滑剤として使って、圧力によって生じる温度の上昇を防ぎます。
これも精度の高い寸法で製作することができますので、寸法に余裕をもってつくる必要がなくなります。
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