アルミは、その軽さ、耐食性、加工性の良さから、さまざまな分野で広く利用されています。アルミニウム合金は、用途や性能に応じて多くの種類があります。
1000系から7000系まで大きく分けられます。それぞれの系列は、主に添加される元素とその特性によって分類されており、使用目的や用途が異なります。
ほかの金属元素を添加することで強度や特性をよくしたものがアルミニウム合金ですが、その種類はたくさんあります。アルミ合金の代表的な系統の1000系から7000系までを種類と材質の区分で解説します。
アルミニウム合金の分類
アルミニウム合金は、添加されている主要な元素によって分類されています。この分類は「○○○○系」と分類されています。
銅が添加された合金は2000系、マグネシウムが添加された合金は5000系となります。それぞれの系統は、添加元素の種類と量によってさらに細かく分類されて、用途や求められる特性に応じて使い分けられています。
さらに、熱処理によってもそれぞれの合金の性能はかわり、用途や値段・コストも変わってきます。
1000系(純アルミニウム系)
特徴:アルミニウム含有率が99%以上の純アルミニウム。電気伝導性、熱伝導性、耐食性に優れていますが、強度は高くありません。
特性:軟らかく、加工性や耐食性が非常に高いが、強度は低い。
用途:電線、箔(アルミホイル)、放熱器、化学装置など。
代表例:A1050(アルミ箔や軽量な部材に使用)。
2000系(Al-Cu系、銅を主成分とする合金)
特徴:銅(Cu)を主添加元素とし、高い強度と優れた耐熱性を持つが、耐食性は低い。
特性:銅を添加した合金で、強度が高く、熱処理による強化が可能。航空機部材や高強度が必要な部分に適する。
用途: 航空機や自動車の構造材、リベットなど。
代表例: A2024(航空機部材に多用される)。
3000系(Al-Mn系、マンガン系合金)
特徴:マンガン(Mn)を主添加元素とし、耐食性と加工性が高い。1000系に比べて強度が高く、耐食性も良好です。
特性:強度は1000系よりやや高いが、2000系ほどではない。非熱処理型合金。
用途:建材、屋根材、飲料缶、キッチン用品など。
代表例: A3003(飲料缶や屋外部材に使用される)。
4000系(Al-Si系、ケイ素系合金)
特徴: ケイ素(Si)を主添加元素とし、耐熱性や耐摩耗性が高い。溶接性が良好です。
特性: 熱膨張が小さく、主に溶接材や耐摩耗用途に使用される。
用途: 自動車のエンジン部品、ピストン、溶接用ワイヤ、溶接構造物など。
代表例: A4032(高温耐性が求められる部品に使用)。
5000系(Al-Mg系、マグネシウム系合金)
特徴: マグネシウム(Mg)を主添加元素とし、耐食性と強度のバランスが良い。強度と耐食性のバランスが良く、溶接性も良好です。
特性: 非熱処理型合金であり、溶接性が良い。海水や湿潤環境にも強い。
用途: 船舶、車両、橋梁、タンク、建材など。
代表例: A5052(海洋構造物や輸送機材に使用)。
6000系(Al-Mg-Si系、マグネシウムとケイ素の複合系合金)
特徴: マグネシウム(Mg)とケイ素(Si)を添加し、強度、耐食性、加工性がバランス良く向上。強度、耐食性、溶接性のバランスが良く、押し出し加工性にも優れています。建材の用途などで使われているので、もっとも使われている材質になります。押出材がメインです。
特性: 熱処理による強化が可能で、多用途に使用される。
用途: 建材、建築用サッシ、自動車部品、鉄道車両、配管、構造材など。
代表例: A6061(鉄道車両や建材に多用)、A6063(建築用のアルミサッシ、アルミフレーム)。
7000系(Al-Zn-Mg系、亜鉛系高強度合金)
特徴: 亜鉛(Zn)を主添加元素とし、亜鉛とマグネシウムを添加した合金、アルミニウム合金の中で最も高い強度を持つ。アルミニウム合金の中で最も高い強度を持ち、超々ジュラルミンと呼ばれるものは航空機の重要な構造材などに使用されます。
特性: 熱処理による強化が可能で、非常に高い強度を持つが、耐食性はやや劣る。
用途: 航空機、宇宙開発、スポーツ用品(ゴルフクラブや自転車)、構造材など。
代表例: A7075(航空機や高強度部材に使用される)。

材質の区分
アルミニウム合金の材質は、上記の系統に加えて、熱処理や加工方法によってさらに細かく区分されます。
同じ7000系でも、熱処理によって強度や硬度が大きく異なるため、用途に応じて適切な材質を選択する必要があります。
アルミニウム合金は、添加する元素の種類と量、そして熱処理や加工方法によって、いろいろな特性を持つ材料にすることができます。

アルミ合金の種類別の価格
アルミニウム合金の値段は、市場動向や需要や供給に影響されるので正確な価格はその時々で異なります。さらに地金の価格によっても異なってきます。
一般的には材料の純度・添加物の種類・製造プロセスの難易度により価格が決まります。
Kgあたりの値段(価格)でアルミニウム合金を比較する場合、いくつかの要因が絡み合ってきます。この系統が一番安いとか高いとはできないこともありますが、一般的に言われている傾向と、価格に影響を与える要因を考慮して、高い順に解説します。
価格に影響を与える要因
アルミニウム合金の価格に影響を与える主な要因は次のとおりです。
添加元素:添加されている金属の種類や量によって値段は変わってきます。希少金属や高価な金属が多く添加されていれば、価格は高くなります。
純度: 純アルミニウム(1000系)は比較的、安いですが、高純度のものは精製コストがかかるため高価になる場合があります。
製造方法: 特殊な製造方法や熱処理された合金は、製造コストがかかるため高価になります。
梱包や荷姿など:ビニールコートをして梱包するなどの梱包や荷姿、運送条件によっても価格は変わってきます。
スクラップ価格: アルミニウムはリサイクル性が高く、スクラップ価格も値段に影響を与えます。スクラップ価格が高い場合は、合金の価格も高くなる傾向があります。
アルミ合金の高い順の価格
上記の諸条件で、一般的な傾向として一般的なアルミニウム合金の価格傾向を高い順に並べると、次のようになります。以下は一般的な傾向であって具体的な価格は時期や市場状況によって変動します。
7000系(亜鉛系高強度合金)
価格: 最も高い
理由: 添加される亜鉛や他の成分が高価であり、製造コストも高い。また、航空機や宇宙
用途など特殊な分野での需要が多い。
例: A7075
7000系 (Al-Zn-Mg系): 航空機などに使用される超々ジュラルミンなど、非常に高い強度を持つ合金が含まれます。亜鉛やマグネシウムなどの添加元素が高価な場合があり、製造も比較的複雑なため、一般的に値段は高くなります。
2000系(銅系高強度合金)
2000系 (Al-Cu系): ジュラルミンと呼ばれている高強度合金などになります。銅の添加量が多いものや、特殊な熱処理が施されたものは値段が高くなる傾向があります。
価格: 7000系に次いで高価
理由:添加される銅が高価で、強度と性能を追求するための製造コストがかかります。主として航空機部材に使用されています。
例: A2024
5000系(マグネシウム系合金)
価格:中程度の価格帯
理由:マグネシウムが添加されて性能があがりますが、製造プロセスは比較的簡単です。耐食性と溶接性が求められる用途に多く使われています。
例: A5052
5000系 (Al-Mg系): 強度と耐食性のバランスが良くて溶接性も良好です。マグネシウムの添加量によって価格が変動します。
6000系(Mg+Si複合合金)
価格: 5000系と同程度、やや安い場合もあります。
理由: マグネシウムとケイ素の添加バランスが優れており、加工性が良いため大量生産しやすい。汎用性が高い。
例: A6061, A6063
6000系 (Al-Mg-Si系): 強度、耐食性、溶接性のバランスが良くて幅広い用途で使用されます。添加元素の価格や製造方法によって価格が変動しますが、比較的安定した価格帯です。
4000系(ケイ素系合金)
価格: 低価格帯
理由: 添加されるケイ素は比較的安価であり、製造プロセスもそれほど複雑ではない。耐摩耗性や耐熱性に特化した用途で使われる。
例: A4032
4000系 (Al-Si系): 溶接性が良好な合金です。ケイ素は比較的安価な元素であるため、価格は比較的安価です。
3000系(マンガン系合金)
価格: 4000系と同程度、場合によってはさらに安くなることもあります。
理由: マンガンは安価な添加物であり、性能はそこそこといった位置づけ。飲料缶など大量生産される製品に使われるため、価格競争が激しい。
例: A3003
3000系 (Al-Mn系): 1000系に比べて強度が高く、耐食性も良好です。マンガンの添加量が比較的少ないため、価格は比較的安価です。
1000系(純アルミニウム)
価格: 最も安い場合が多いです。
理由: 添加物がなく、製造コストが低いためです。強度が低いため、高性能が求められる用途では使われない。
例: A1050
1000系 (純アルミニウム系): アルミニウムの純度が99%以上の合金です。添加元素がほとんどないため、一般的に最も安くなります。高純度のものは精製コストがかかるため、高価になる場合もあります。
高い順の並び
7000系(高強度・特殊用途)
2000系(高強度・航空機用途)
5000系(耐食性・溶接性が必要な用途)
6000系(汎用性が高い)
4000系(耐熱性・耐摩耗性が特長)
3000系(低コスト・大量生産品向け)
1000系(最も安価な純アルミニウム)
ただし、実際の価格は市場動向や需要によって変動するため、正確な比較をするには最新のアルミニウム相場を確認する必要があります。
上記の価格傾向はあくまで一般的なものであり、具体的な価格は市場状況や取引量、サプライヤーなどによって変動します。
スクラップ価格の変動も合金の価格に影響を与えるため、常に最新の市場動向を確認することが重要です。
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